詩  雨ぁふるども

いちどだけでも方言で何かを書いてみたいと思っていた時期がありました。そのときに書いた詩です。

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雨ぁふるども

雨ぁざんざどふって
風ぁ暴れでらども
おめだじゃ泣ぐな
ついだばりの愛(め)んげ花っこ
びじゃびじゃど濡れでも
やっとなったばりの実っこ
びだびだど叩がれでも
おめだぢや泣ぐな
やっとごさ張った根っこで
ぎっちりど土つかんで
堅ぐ組んだ手しばさ
蔦きづぐ絡ませで
ぜって倒れるな
童(わらす)だったどぎ
そごらの堰さ入って
びょんびょんず蛙捕ったり
起ごしたばりの土さ
びろびろど動ぐ蚯蚓(みみず)捕まえだった倅ぁ
街さ行ってしまった
今みてでなぐ
ずーっと広がった田さ
耕運機かげだった父さんも
遠ぐさ稼ぎに出で
居ねども
おればりぁ残ってらがらな
朝がらばげまで
背中さでっけ空しょって
草も取ってやる
水も肥料も入れでやる
腰いで(いたい)たって
頭病めるたって
何じょなごどあったたって
畑ぁおれゃまもらねばね
あどぺっこ待でば
こっただぼろ綿みでな雲ぁ裂げで
陽っこぁ出てくるべ
天気ずものぁ
いっつも同じでねがらな
陽っこさえ出れば
びっしりどくっついだ滴さ
光ぁまっすぐに落ぢで
そっちもこっちも、は、
びがーびがど光るべな
誰も居ねたって
誰も見ねたって
ひび割れだとまとだの
しょぼくれだ胡瓜の花だの
くたびれだよんた葉っぱだたって
も、は、
活ぎー活ぎど光るべな

 


離農の進む中で一人で一心に田畑を護る姿に感動、詩にしたものです。
因みに日本の食糧自給率は37%。干ばつ進む先々は?

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幾千の剣

 静止する暇もなくクロアゲハの滑空
機械音を発し上下するスズメバチ
足元にはアリたちがせわしく行き来する

どこか狂気を帯びた
真昼の光は
安穏を欠く影を地に曳きながら
淡々と生きるものたちに
鋭い幾千の剣を振りかざす

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五月よ

 

五月よ

雨が曲がる幹を
黒い大蛇に変えても
風がしなる柳を
むごく煽りたてても

緑の葉裏に朱き血をかよわせ
節々にいのちの蜜を滴らせ
大地を
甘やかないのちで満たし

弱りはてた四肢を
よみがえらせる

五月よ
もう季節の移ろいなどは忘れ
刻の掟にはきっかりと背を向けて
ここに永劫に止まり
強く優しげで柔和な光を
蔭ることごとくを
照らし出すまで
神秘な力を宿すまで

静かにふり注いでいてほしい

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なみだをこぼす鈴蘭-苦しんでいる友達に捧げるー  ぶんな詩

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ああ
ほんとうに
なみだが出ます
どうしてこうなのか
どうしてああなのか
それが罪が原因だというなら
じつは
もう
何千回も悔い改めました
それでも
なみだがにじみ
なみだは流れます
 
きよいものが
きよいほどに
きよいばかりに
後からあとから
なみだが出るのです

じぶんを洗って
すみずみまで洗って
頭のてっぺんから
指先
足のつま先まで
洗って洗って
もう
からだじゅうが
真っ赤に腫れるくらいに
洗えば洗うほどに
なみだはこぼれる

きよいものの悲しみが
なぜこんなに深いのか
それはまるで
永遠に
解けることのない
複雑で難儀な
パズルのようです

けれども
そのたくさんのなみだが
いつしか
ひとにも知られずに
小さく
ひっそりと
透明な紫色に輝く
勲章となるように
祈ります
いのります



 

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鳥の影

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水の面にすべり
先んじることなく
遅れることなく
波だっていようと
静まっていようと
鳴きもせず
笑いもせず
不平をいわず
呟きもせず
ため息もつかずに
光のあるかぎりは
寄りそい
そっと着きしたがう
鳥たちの影

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星たち

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あのきらめきはいったい何なの?
ああ、あれはね
暁が
おお慌てに慌てて
袋にかき集めた星たちが
ずんずん重たくなって
袋の底がとうとう破れちゃって
たまたま地上に眠っていた池の中に
ざらざらと一気に落ちてしまったのさ
もう
リゲルやシリウス
プロキオン、ポルックス
カペラやアルデバランも
ごちゃまぜさ
何が何だかわからないまま
ああして
沈むことも忘れて
白銀となって
ただひたすらに
光を放っているのさ

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球根たちは雪の下

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スノードロップやヒヤシンス
スイセンやユリにチューリップは
みんなまだまだ雪の下
それでも
芽はいまにも吹き出しそう
けっこう伸びてもいるだろう
見えないけれども生きている
真っ暗な土の中で
春がくるのを
疑いもせずに待っている
たまには居眠りや
小さなあくびもするけれど
頭上の雪が融けだして
だんだん土もぬくもって
だいじに花芽をかき抱く
球根たちは待っている
春一番を待っている

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夜明け

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薄墨色のそらに
硬く冷たくたたずむ
凸凹のビル
その向こうから
朝は
街をようよう溶かしだし
街灯の白昼色を消し
後ろ手に闇をかなぐりすてて
きょうという日に在るものをみな
きょうというあやかしの器へと
一つひとつを
ていねいに移し変えていく

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