230117 クラシック倶楽部を聴く ウェールズ弦楽四重奏団 演奏会
桐朋学園の学生により2006年に結成されたカルテット、ウェールズ弦楽四重奏団。三人のゲストとともに演奏した「変容(弦楽七重奏版)」を中心にお送りする。
ウェールズ弦楽四重奏団
ヴァイオリン﨑谷直人、ヴァイオリン三原久遠 、ヴィオラ横溝耕一、チェロ富岡廉太郎。桐朋学園の学生により2006年に結成。2008年ミュンヘンARD国際音楽コンクールにて第3位入賞。これまでメナヘム・プレスラーやポール・メイエなどの著名な音楽家と共演。2017年よりベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲録音プロジェクトを開始。その名の示す通り真の音楽を誠実に追及する姿勢が高く評価されているカルテットである。
ウェールズ弦楽四重奏団のコメント
「今回の演奏会のテーマが変奏と変容ということで、一曲目は第3楽章にとてもユーモアにあふれて美しい変奏曲を持つベートーベンの第5番を演奏します。メインはリヒャルト・シュトラウスのメタモルフォーゼン(変容)を演奏します。いまできる曲をバーンとやってるだけじゃないから、うちの場合。三原が考えてますけど、きょうのもちゃんと全体を通してストーリーがありますし、それと僕ら今ベートーヴェンを全曲取り上げるというのを軸にやっていて、それプラスアルファで何ができるかなということをすごく考えてくれてます。」
「三原がもってきて、まず僕がファーストは難しいのでスケジュールとにらめっこして間に合うかなとか、﨑谷からNGが出たことも過去にはある。﨑谷がやるといったら、それはもったいないから俺たちは何もいわない。」「言ったことないよね、直前になってやめときゃよかったとか」「いつも見事よね」「うん。無意味なプログラミングは僕らはぜったいにしない。それはもう見事、手前みそですが。」「仲悪くはなく友達という感じでもない。それぞれ各オーケストラで仕事もしてますし、いろんな現場で別な方と弾く機会もあるんですけど、各自が経験したものを持ち帰ってきて、ああでもないこうでもないと、一定の緊張感のある現場なので、持ち帰って論議しあう、そういう関係ですね。ずっと一緒に成長してきたし変化もしてきた仲間なので、演奏家としての自分をいちばんわかってくれていると信じているし、音楽的なつながりが強い仲間かなと思います。」「もちろんここで自分がこう弾きたいと思っても、話し合いの末却下されることもありますが、オーケストラになると、より自分の意思だとか表現したいものはどうしても薄まる。人数も多いですし。より自分がナチュラルに表現できる、だから自分にとっては、やはり帰る家みたいに思っています。」
「ここまで弦楽四重奏に打ち込むことは、たぶんこのメンバーに出あわないとしなかったことなので、よく出会ったなと、ほんとにメンバーにはすごく感謝してて、僕が個人的にすごく成長できたのも、このメンバーといるときがほとんどだったので、ついてる人生だったなと思っています。」
☆「弦楽四重奏曲 イ長調 作品18第5から 第3楽章・第4楽章」ベートーベン:作曲
ウェールズ弦楽四重奏団
この曲は若きベートーヴェンによる弦楽四重奏曲で、第3楽章は主題と5つの変奏で構成されている。
☆「変容(ルドルフ・レオポルトによる弦楽七重奏版)」リヒャルト・シュトラウス:作曲
ウェールズ弦楽四重奏団、(ビオラ)佐々木亮、(チェロ)横坂源、(コントラバス)池松宏
🎵ベートーベンの全曲演奏のリリースにも漕ぎつけたベートーベンに通じるウェールズが選んだベートーベンの「弦楽四重奏曲イ長調」は、やはり「変容」を念頭に置いた選曲。4人がそれぞれの意見を提示し、否定されることがあってもそれこそ変容を遂げつつ邁進中かと。ベートーベンの弦楽四重奏曲イ長調」は、ここでは第3、4楽章。
4人+池松宏、佐々木亮、横坂源の弦楽7重奏はリヒャルト・シュトラウスの「変容」。これが何とシュトラウス80歳代での作曲。ほんとかな? ぐぐってみるとほんとうだった。第二次世界大戦の末期に作曲されている。自分が初演した劇場が次々に焼け落ち瓦解していく状況下での作曲。哀惜、悲しみと怒りが昇華され、本来は23の弦のための作曲でもあったようだが、ここでは7つの弦が、まるで叫びをのど元に抑え、音符に落とし込んで浄化させたような各々の響きが相和している。表現しよう、表現したいと、絵筆を取ったり、楽器を取ったりする、そして楽譜や画布に、或いは彫刻にとその枠の中に表出を修めることの技術というか、能力というか、想いというか、これらの才能が不思議に思われてならない。戦争による変容、苛酷さ、悲哀。変容の段階、或いは変容させ形と成した段階にもたらされるカタルシスも感じられる。感情のエッセンスが集められ濾過され凝縮せられる芸術の不思議さ。動物と人間はこんなところでも違うのだ、そんなことを思わせられた。
「変容」はまず弦楽七重奏の形で構想が練られたらしい。1990年になって初期の七重奏の楽譜が発見され、現代の音楽家が手を加えて弦楽七重奏版の「変容」が完成したという。
🎧名曲アルバム。「歌劇“蝶々夫人”から“ある晴れた日に”」プッチーニ作曲
「歌劇“蝶々夫人”から“ある晴れた日に”」(ソプラノ)木下美穂子,(管弦楽)東京フィルハーモニー交響楽団,(指揮)現田茂夫 ~長崎県長崎市~
明治期、長崎の外国人居留地の東山手十二番館に、キリスト教布教のために来日したサラ・ジェーン・コレル女史が出入りの商人から蝶々さんのエピソードを耳にし、その話をもとにしアメリカに住むコレル女史の弟がこれをもとに短編小説を執筆した。これをもとにプッチーニがオペラ「蝶々夫人」を書く。
蝶々夫人はついに夫がもどらないと悟り、自ら命を絶つ。
⛳争いの多くは利害から発生して、戦争も、途中から平和交渉で話し合いで平和解決したという例は幾つあるのだろう。とにかくやっつけられればやっつける。この繰り返し。殺戮と破壊。どちらかが壊滅するまで、もはやこれ以上は戦い不能となるまで叩き潰す。無駄なことの繰り返しだ。この有様を日々メディアで目にしない日はなく、メンタルまでおかしくなりそうだったが、しかし生きて行かねばならない。それでも日々生きるための力がまだ生きよと命じている。この力は、私という一個人と神との間の平和が成り立っているときに、自らの内に働いているのを覚える。
6時38分更新
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