221128 クラシック倶楽部を聴く ルーシー・ホルシュ&トーマス・ダンフォード デュオ・コンサート
オランダの若手リコーダー奏者、ルーシー・ホルシュとフランスを代表するリュート奏者、トーマス・ダンフォードによるデュオコンサートをお送りします。
【演奏】ルーシー・ホルシュ(リコーダー)、トーマス・ダンフォード(リュート)
【収録】2022年9月8日浜離宮朝日ホール
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ルーシー・ホルシュ:リコーダーの魅力について。さまざまな様式の音楽を演奏できる多彩さと楽器としての純粋さが魅力です。声楽的な性質もあり私はほとんど自分の声のように感じています。人間の声を除けば完璧で最も直接的な表現手段だと思います。
トーマス・ダンフォード:リュートの魅力。リュートが奏でるメロディーもハーモニーも大好きです。でもやはりメロディーですね。ギターではこれほど豊かに響きません。とても長い一つのラインが生まれるのでメロディーをフレーズにすることができるのです。低音弦のおかげで美しい後光のようなものが生まれ屋外で演奏しても温かい響きが得られます。高い音からこんなに低い音まで出せる幅広い可能性を持ったすばらしい楽器です。
ルーシー・ホルシュ:今回のプログラムについて。ドイツ、フランス、イタリアとさまざまなスタイルを取り入れ多彩なプログラムにしています。技巧的な作品もあればめい想的な作品もあります。その対比を楽しんでいただければうれしいです。今回のプログラムのテーマは「対話」。私たち二人の対話というのはもちろんですが、直前に演奏した曲が次の曲の雰囲気に変化をもたらすこともあります。つまり作曲家同士、作品同士の対話でもあるのです。
共演について。トーマスとの共演はすばらしい体験です。一緒に演奏するまで気づきませんでしたがお互いの楽器の相性がとてもいいと思います。リコーダーの旋律とリュートのハーモニーの響きが敏感に反応し合うのです。本当に楽しいです。トーマスの演奏は自発的なところが魅力です。コンサートでは即興的な要素が多いためジャズ・ミュージシャンと呼びたくなるほどです。私も常に注意深く耳を傾けるようになりとてもいい影響がありました。本当に楽しいです。
トーマス・ダンフォード:私たちの楽器は互いに補完し合っています。私がハーモニーをルーシーはメロディーを奏でる。どちらも強弱のダイナミクスに可能性がありますがそれがルーシーのリコーダーの驚くべき点でもあります。ルーシーと演奏していると質のいい音楽になれてしまいます。というのも彼女は楽器を自在に操り自身の演奏を考察できるからです。これは音楽家の持つ資質の一つですが自発性と瞬間的な反応につながります。互いに聴き合っていると音楽は私たちを違う場所・時代に連れて行ってくれます。
【曲目】
☆リコーダー・ソナタ第2番(カステッロ)
☆組曲 BWV997から(バッハ/ホルシュ編)
リュート、もしくはリュートと似た鍵盤楽器ラウテンヴェルクのために書かれたと考えられている。サラバンドには「マタイ受難曲」を締めくくる最終合唱との類似も見られ、バッハの創作の充実期に書かれた作品といわれている。
☆あふれよ、涙(ダウランド)
この作品はリュートの伴奏による歌曲として当時ヨーロッパで大流行したダウランドの代表作。
☆リコーダー・ソナタハ長調(テレマン)
4,000曲以上の作品を残したといわれるテレマンは18世紀前半にハンブルクを中心に活躍したドイツの作曲家。楽譜を定期刊行物として予約出版し音楽愛好家から絶大な支持を得た。リコーダーが得意だったという彼のこの作品も愛好家向けの楽譜集「音楽の練習帳」の一曲。
☆ソナタ集「忠実な羊飼い」から リコーダー・ソナタ第6番ト短調(シェドヴィル)
終楽章のテーマはヴィヴァルディのバイオリン協奏曲集「ラ・ストラヴァガンツァ」から転用されている。
☆恋のうぐいす(クープラン)
☆人間の声(マレー)
マレーはクープランと同時代のパリの作曲家。貧しい家庭の出身ながら若くして宮廷音楽家となった。この曲は当時人間の声に最も近いとされたヴィオラ・ダ・ガンバのために書かれた。
☆「スペインのフォリア」から(マレー)
フォリアはイベリア半島発祥とされる舞曲でその名は「狂気」の意味を持つ。低音部の主題をもとに変奏することが流行し、コレッリやヴィヴァルディも自作に取り入れた。マレーの作品は主題と31の変奏からなり、ホルシュはその中から10曲を選び出し編曲した。
🎵木管は樹木のさざめき、ざわめき、ひそやかさ、鳥の鳴き声、羽ばたき、移ろい、そして木漏れ日までを想起させる。そしてリュートは時代の空気感というものの中に聴く者を取り込んでくれる。ダンフォードいう低音弦から生まれる美しい後光のようなもの、その響きが私にとっては最も大きなリュートの魅力かと思う。
🎧名曲アルバム。「トロイメライ」シューマン作曲/栗山和樹・編曲。ピアノ仲道郁代,東京フィル&矢崎彦太郎~ドイツ・ライプチヒ、ツヴィッカウ
シューマンはツヴィッカウの本屋を営む家に生まれ、文学にも親しむ。20歳でライプチヒへ出て本格的に音楽を学ぶ中で、天才ピアニストと謳われたクララ・シューマンとであい紆余曲折を経て結婚。ドイツロマン派を象徴するカップルであった。クララの「あなたって時々子どものようね」のひと言に、このやさしいトロイメライができあがったようなのだ。この5分はシューマンの最もしあわせな人生の部分だけが切り取られたように編集されている。その一コマ一コマがこのトロイメライによく映えている。
⛳8時33分更新
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