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221007クラシック倶楽部を聴く ジャパンシリーズ Takemitsu Alone 〜武満徹没後25年〜

草月会館イサム・ノグチの石庭に静かに響く武満徹の音楽「巡り」「海へ」など代表作から武満の愛したビートルズまでフルート工藤重典・ギター鈴木大介2021年収録 武満徹作曲「巡りーイサム・ノグチの追悼に」(フルート工藤重典)武満徹編曲「ギターのための12の歌」全曲・「ロンドンデリーの歌」「オーバー・ザ・レインボー」「サマータイム」「早春賦」「星の世界」「ミッシェル」「ヘイ・ジュード」「イエスタデイ」他(ギター鈴木大介)「海へ」(アルト・フルート工藤重典 ギター鈴木大介)2021年草月会館 花と水と石の広場「天国」(イサム・ノグチ作)で収録

コメント
工藤重典:武満さんが雄大な海を鯨のような頑健な身体を持って自由に泳ぎ回りたいんだと仰ってたように、時間とか空間とかいったものをすべて超えて解き放たれた命のありようというか、そういったものが非常に凝縮された音楽ですね。改めてその一つ一つの音楽が自分にどんなものをもたらしてくれるのかということを皆さんがとてもニュートラルな状態と言うか真摯な気持ちで接しておられるなというのは、コロナ禍になってからの自分の演奏体験を通じて強く感じるところです。
 そうなってくるとこの起承転結というものがあるようなないような終わり方も、まあ、いわゆるブラボーって声がかけられない、ジャンと終わらない曖昧模糊とした終わり方の多い、武満さんの音楽というのは。すごくそれを目的として音楽を聴かないという状態においては真実の姿が皆さんに受け取ってもらえると思います。
鈴木大介:リズムとかそういうのもすごく複雑なんですけど、彼の書いている作品はだいたいすごく複雑ですね。だけどなんか、その中のこう僕らが探し求めているものがまた発見されるんじゃないかなあという気がするんです。考古学の  が一生懸命掘り起こして何か見つけるみたいに、わかってんだけどまだ何にも出てこないなあみたいな感じで一所懸命やるでしょ、ああいう感じでこの作品を掘り下げて一生懸命演奏したり気持ちを入れて、ま、本番も重ねていくと、独特な精神性の違うもの、深いものというんですかね、出てくるような気がする。それが僕たちを支えるような気もして、これからたぶん、これからの時代、別な意味をもって接するということにだんだんなってくる。僕はそう思います。
鈴木大介:「ギターのための12の曲」、何でも書ける人だったですね、武満さんは。そういうのが一切ご自身のコンサートピースの中には顔を出さないんですけれども、非常にジャズでも何でも書けた。だからその割烹なり料亭をやってる世界的に有名な板前さんが、実は中華作ってもステーキ焼いても一流だみたいなはなしですね。そういうバラエティーに富んだ方なんですよ。12の歌というのは、ギタリストの荘村清さんのために武満さんがアレンジした12の世界中のポピュラーソングですね、とはいえ、世界中から集めたのに、なぜかビートルズが4曲も入っている。どんだけビートルズが好きなんだという、ほんとうにビートルズが好きでらした。一つひとつの曲に、その曲に対する思い入れとか愛情が感じられて、その一曲一曲のもとの世界観というか、原曲の世界観を大切に思ってらっしゃるんだなということがわかります。特にギターの曲は、武満さんの編曲作品もそうですけれども、オリジナル作品も非常にロマンティックな部分が強いのでそういった映画音楽の巨匠武満さん、そして、現代音楽の武満さん、前衛芸術の武満さんという色々な武満さんがちょうどうまくバランスをよく顔をのぞかせている、武満さんの音楽の中でも最も、ある意味では武満さんらしい音楽がギターのための音楽だと思います。

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曲目
「巡り」
 工藤重典フルート演奏。イサム・ノグチへの追悼曲
ギターのための12の曲
 すべて武満の編曲版。クラシックギターが「今日」とふれあい生きたものとなるなるようにとの願いがこもる。
1
、ロンドンデリーの歌 (アイルランド民謡)
2
、オーバー・ザ・レインボー (ハロルド・アーレン作曲)
3
、サマー・タイム (ジョージ・ガーシュイン作曲)
4
、早春賦 (中田章作曲)
5
、失われた恋 (ジョゼフ・コスマ作曲)
6
、星の世界 (チャールズ・C・コンヴァース作曲)
7
、シークレット・ラヴ (サミー・フェイン作曲)
8
、ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア(ジョン・レノン/ポール・マッカトニー作曲)
9
、ミッシェル(ジョン・レノン/ポール・マッカトニー作曲)
10
、ヘイ・ジュード(ジョン・レノン/ポール・マッカトニー作曲)
11
、イエスタディ(ジョン・レノン/ポール・マッカトニー作曲)
12
、インター・ナショナル(ピエール・ドジェイテール作曲)
海へ
 ギターとフルートのための曲。環境保護団体からのリクエストにより作曲。
1
The Night
2
Moby Dick 白鯨
 ハーマン・メルヴィルの小説「白鯨」に因む
3
Cope Cod 鱈岬
 アメリカのケープゴットに因む

🎵「巡り」輪廻転生を思い巡らしながら聴く。フルートがいつの間にか尺八に重なるのだけれども。魂が次の嵌りどころを求め揺らぎながら旅しているような。「ギターのための12の曲」、武満のうちにある音楽の蔵に広く深く網を差し掛け下ろしたときに、武満の感性に引っ掛かってきた曲が手繰り寄せられての12曲かと。編曲により穏やかな揺らめき懐かしさ、色彩感によってリニューアルされた感じが。この曲目の中でちょっと驚きだったのは「インターナショナル」。労働歌、革命歌の系列。私には不屈な闘志が感じられなければ「インターナショナル」じゃないという思い込みがある。聴いて血が湧き元気が出るようでなければ。しかし武満の「インターナショナル」は平和調。尖った角も丸められてしまう。それが武満の人間味を伝えてくれているところと思われた。武満の音楽、音色には独特な「宿るもの」がある。それが哀惜であったり、時としては寂まく感であったり、安らぎであったり、追想であったりと、音を勝手に自らに引き寄せて聴いている。

🎧名曲アルバム。「バレエ組曲“エスタンシア”から“終幕の踊り”」
三ツ橋敬子&東京フィル

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⛳7時9分更新


舞台はアルゼンチンの大平原。そこに暮らすのは、牛の群れを追う「ガウチョ」たち。作曲家ヒナステラは、何者にも束縛されず、誇り高く生きる彼らの姿を音楽に描き出した。自らがガウチョに取材している。

 作曲者の勝手な思い込み、付け加えの感情というものがなく、直截でおおらかなガウチョのすがたそのままの楽曲に親しみと好感が持てた。映像に見るこのような暮らしには、毎日の朝のニュースを見ながら、驚き、呆れ、悲しみの涙、対面上慟哭を押し殺しながら朝飯を掻き込み飲み下し、映像過ぎ去れば世の不条理も一旦は脳裏に預けてその日を何事もないかに生きやり過ごすという偽善は一切ないかに見える。

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