220912クラシック倶楽部を聴く イ・ムジチの四季
今回のイ・ムジチの「四季」、これは現在のコンサートマスター、マッシモ・スパダーノの感覚かと思ったが、前任者のアントニオ・アンセルミはこの公演の直前に急逝しており、コンマスを引き継いだマッシモが成り行きからいっていきなりアンセルミの音を覆すとも思われない。ただソロはマッシモ。アンセルミはドラマティックな演奏を得意としていたようだが、マッシモは古楽に通じているという。1983年までに1000万枚を売り上げたイ・ムジチ。地球全体に認知され聴かれているということか。1952年デビュー。番組予告を初めて見たときは、正直、イ・ムジチという名がセピア色を帯びて聞こえた。ところがそれは間違い。イ・ムジチの果たした役割を思いつつ耳を傾け、団員のお一方お一方、特にアンコール曲を喜びのうちに演奏くださって、その喜びがこちらにそのまま流れ込み、心が揺すぶられた。番組タイトルに「イ・ムジチの四季」とあったけれども、やはり「イ・ムジチの四季」は他の四季とは違う、そう思わせられた。
今回の字幕は「あずさまゆみ」。この字幕で、実にドラマティックに聴くことができた。これには哲学的な意味も込められているといっていたのは誰だったか、もう云十年前に読んだ解説のこと。
夏の楽章で、北風が挑みかかってきたところで「牧人は運命が脅かされているのを恐れて泣く」「凶暴なハエどものため疲れた手足が憩うことができない」「ああ悪いこと恐れているとおりだった」「雹がふって誇らしげな麦の穂を絶つ」……、ヴィヴァルディの曲には苦悩すらも降り注ぐ光の中にある、光の透過があると感じられる。ヴィヴァルディはカトリックの司祭でもある。「冬」の章、最後の「冬は喜びをもたらしてくれる」。あたたかくそして意味の深いことばだ。
あまりに有名なヴィヴァルディ、しかしこのヴィヴァルディを自分がどの程度把握しているかはずいぶんと怪しい。というわけで、こちらを繋いでみた。
アンコールはバッハの「アリア」、ヴィヴァルディの「調和の霊感 作品3第10番 第一楽章」。喜びに満ちた「調和の霊感」!
春 第一楽章
春が訪れる
小鳥たちはにぎやかに
喜ばしい歌で春に挨拶する
西風の息吹に泉は柔らかく
ささやきながら流れ出る
大気を黒いマントで覆って
春を告げるため稲妻と雷鳴が
選ばれたものとしてやってくる
嵐が静まると小鳥たちは
再び魅惑にあふれた歌を聴かせる
そして花咲く快い牧場では
木の葉と草木の親しげなささやきに
忠実な犬を従えて牧人は眠る
🎧名曲アルバム。「真白き富士の根」インガルス作曲
林美智子,現田茂夫&東京フィルハーモニー交響楽団
鎌倉市の七里ガ浜で明治43年に逗子開成学園に学ぶ12人の男子学生を乗せたボートが転覆し全員死亡。女学校教員の三角錫子は滞在中の逗子で遭難の報に接し、追悼の詞を賛美歌にのせてこの歌を作った。大正時代に全国的に広まる。
⛳ヴィヴァルディ、脳のそちこちにこびり付いている錆を優しく静かに的確に、まるでサンドペーパーのように擦過しては削り取ってくれる。さび付いた部分を掃除するにはうってつけの曲。それが今は8時44分。5時に聴いてから4時間近くも経っているわけで、この4時間近くの間にまた錆がうっすらと溜まったのでは。
8時46分更新
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