220808 クラシック倶楽部を聴く スティーヴン・オズボーン ピアノ・リサイタル
スティーヴン・オズボーンは1971年スコットランド生まれ。ナウムブルク国際コン、クララ・ハスキル国際コンで優勝。音楽の本質を鋭く捉えた実力派ピアニスト。知的なアプローチで緻密・精緻な分析に裏付けられた音楽性と確かな技術でベートーベン最晩年のソナタを描く。
オズボーンのコメント
―後期三大ソナタの特徴についてはー
ベートーベンは一生を通じて、即興と言うものにこだわっていました。彼自身即興演奏を競い合うようなことをしましたし、作曲に当たっても即興的な要素を組み込もうとしていました。年を経るほどにそのやり方が巧妙で繊細になっていきました。この最後の三つのソナタは即興的な要素が巧みに組み込まれた見事な例だと思います。ですからこれらの作品には自然に湧いてくるという感じがあります。構築されたものというより、意識の自由な流れが感じられます。前作のハンマークラヴィーア・ソナタは40分くらいの曲です。しかしこの三つのソナタは20分です。3曲目は25分でしょうか。素材は圧縮されていて、ベートーベンが何を表現しているかと言うと、決して長い演奏会にはなりませんが、表現されることはどんな演奏会にも引けを取りません。音楽的中身が濃いからです。
―ピアノ・ソナタ30番についてー
曲ごとに特徴を述べるのはとても難しいですね。いろいろと異なる特徴がありますから。作品109のソナタには何かいいものがあります。ベートーベンは自分の作品集に収めるために曲を書いていました。ピアノ・ソナタの作曲依頼があったとき、彼の助手がその曲をソナタの第一楽章にしたらどうかと提案したのです。作品集に収めるような曲だったからか大作のように構えたところのない曲です。面白いのはとても即興的なことです。非常に短いソナタ形式の曲です。3曲ともそうかもしれませんが、構えたところがないというところで特徴が生まれるようです。とてもやさしい感じで始まります。謙虚といってもいいかもしれません。そんな第一楽章とは対照的で、第2楽章はとても攻撃的です。第3楽章はすばらしい変奏が続きます。曲の最後が超絶技巧になりますから、ピアノが素晴らしく響くので、リストはそこが大好きだったのでしょう。
―ピアノ・ソナタ第32番についてー
最後のピアノ・ソナタ作品111、このあとベートーベンがピアノ・ソナタを書かなかったのもうなずけます。(拾いかねた部分)2つの楽章は極めて対照的です。第一楽章は密度が濃く、攻撃性が満ちています。第一楽章はやはり前の時代を向いていて…古い音楽の要素があるのですが、そこにもベートーベン的な性格が非常に強く出ています。そのような攻撃性とは対照的に第2楽章はベートーベンが書いたとは思えないほど叙情的です。(拾いかねた部分)かれはここで素晴らしいことをやっている。変奏というとふつうは旋律を超絶技巧的にしたり短調にしたりと違うものが集められて最後は拍子を変えたりして楽しく元気よく終わる形にします。しかしベートーベンの場合はまったく違い、(拾いかねた部分)そして主題を再現しますが、最初と違ってたくさんの音符があります。その形をとらないところも2か所ほどありますが、全体として最初は少ない音符、最後にはたくさんの音符ということで単純です。ほとんど平凡ですらあります。あまりにも単純すぎて、このようなことをした作曲家はいないかもしれません。しかしベートーベンがしたことは感情の面からいうと、とても信じられないほどすばらしいのです。最初はすこしずつ有機的に展開していくのですが、やがて多様な性格を帯びてきます。展開が分かりにくかったりもするのですが、しかしその真っただ中でとてもテンポが速くジャズっぽくなる所があって、その後突然えも言われぬほど美しくなります。そこでも前の変奏より音符が増えていきます。感情の面でいうと、これは彼の作曲したものの中でも異例中の異例でしょう。これほど私を感動させる楽章は他にないと思います。一つの大きな金字塔です。この終楽章ゆえに、最後のソナタが最も思い入れがありますね。音符もそんなにない、音楽の流れに身を任せるような感じのところが多いです。これほど輝かしい音楽の中でそれができるのはいいことですね。
曲目
☆ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 作品109
作品109は三つのピアノソナタの一曲目。壮大さが凝縮された音楽からはベートーベンの新たな音楽の歩みが感じられる。
☆ピアノ・ソナタ第32番ハ短調 作品111
ベートーベンが作曲した最後のソナタ。2つの楽章で構成されていて、第一楽章は張り詰めた雰囲気が漂い、第二楽章は美しい旋律の変奏曲。ベートーベンが最後に到達した音楽の境地を見るかのような奥深い一曲。
🎵演奏に明晰さが通っている。個人的に聴きどころと思うのは何といっても32番の第2楽章。静謐な中にまるで色彩の光が白光に溶け込んでその彩を失くするように消えゆく最後の音がまだのこっている。この32番のオズボーンいう抒情性。洞窟のはるか向こうに日がさしていて、そのあたりから密やかに鳴りこぼれる音の連なり。繊細なところを丁寧にひろうオズボーンの指先をカメラが大きく映し出したとき、なぜか感動し涙が。オズボーンの左手中指のテーピング、終生指に故障を来さなかったピアニストは果たしてどれぐらいいるのだろう。
🎧名曲アルバム「マズルカ ヘ短調 作品68 第4」ショパン作曲
(ピアノ)廻由美子 ~映像はポーランド ジェラゾヴァ・ヴォラ、ワルシャワ~
ワルシャワの西50キロにあるジェラゾヴァ・ ヴォラにフレデリック・ショパンの生家がある。今は記念館。この家は、当時この一帯を所有するスカルベルク家が暮らした。ショパンの両親はともにこの家で働いていた。2人はこの家で新婚生活を送り、1810年に長男のフレデリック・ショパンが誕生する。
⛳6日(土)には岩手の一関学院が甲子園初戦突破。延長11回までの試合。校歌が歌われた。作詞:芳川 顕雄作曲:千葉 了道。頑張りがすごい。
14時40分更新
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