クラシック倶楽部を聴く コリヤ・ブラッハー バイオリン・リサイタル
ベルリン・フィルの第1コンサートマスターを6年間務めた経歴を持つブラッハー。現在、世界各国で独奏者として活躍。ピアノは室内楽でも信頼の厚いオズガー・アイディン。 ベルリン・フィルの第1コンサートマスターを6年間務めた経歴を持つコリヤ・ブラッハー。現在、世界各国で独奏者として活躍。ピアノは室内楽奏者としても信頼の厚いオズガー・アイディン。【出演】コリヤ・ブラッハー(バイオリン)オズガー・アイディン(ピアノ)
【曲目】
「バイオリン・ソナタ第3番」(ブラームス作曲)
「ヴォカリーズ 作品34第14」(ラフマニノフ作曲)
【収録】2019年6月22日トッパンホール
コリヤ・ブラッハー
ベルリン生まれ。父は作曲家のボリス・ブラッハー。幼い頃から音楽に触れ、5歳でバイオリンを始める。ベルリンで学んだ後に15歳でニューヨークに渡り、ジュリアード音楽院でドロシー・ディレイに師事。1993年からベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第1コンサートマスターを6年間務めた後、世界各国でソリストとして活躍。バロック音楽から現代曲まで幅広いレパートリーを持つ。
使用楽器は1730年製グァルネリ・デル・ジェス「Ex.ズッカーマン」および1730年製ストラディヴァリウス「トリトン」で、キミコ・パワーズ氏より貸与されたものである。
オズガー・アイディン
コロラド州生まれ。トルコ系アメリカ人ピアニスト。トルコのアンタラ音楽院とロンドン王立音楽院で学び、1997年ARDミュンヘン国際ピアノコンクール最高位(1位なし2位)、2001年クリーヴランド国際ピアノ・コンクール入賞など、数々の賞に輝き、国際的なキャリアを築いている。
ブラッハーのコメント
1730年製グァルネリ・デル・ジェス「Ex.ズッカーマン」は、ピンカス・ズッカーマンが若い頃使っていたのでその名がついています。彼の大ファンだった私には特別な楽器です。ニューヨークに留学していたころに、彼がこの楽器で練習するのを聴いたのでしょう。深みのある甘く温かい響き、素晴らしい楽器です。ガルネリはやや心情的な楽器です。おだやかな音色はブラームスに合います。ガルネリは「心」、ストラディヴァリウスは「知性」の楽器といわれています。ストラディヴァリウスは奏者が覚悟を決めて弾かないと鳴ってくれません。ガルネリの方が自由奔放で奏者に寛容に反応してくれます。ご覧の通り、ストラディヴァリウスはガルネリより幅が広くがっちりしていますね。この楽器は20年以上弾いています。
1730年製ストラディヴァリウス「トリトン」は、トリトン将軍の後にギリシャ神話の愛好家が使用しトリトン神にちなみ「トリトン」と名付けました。ガルネリより骨太で存在感のある響き、革命的で力強いベートーベンの音楽に合っています。
楽器に寄り添う姿勢をいえば、弾き方を要求されます。特にストラディヴァリウスは頑固です。「ストラディヴァリウスは奏者を追従させ、ガルネリは奏者が主導することができるそうです」。それを聞いて大げさだと思いましたが、実際にはその通りでした。一つの楽器を理解するには3~5年かかります。時間をかけて奏者が望む響きを奏でてもらうのです。だから私が長く弾いていた楽器を誰かが弾けばしばらくの間私の音がします。奏者が望む音がするように少しずつ楽器を導くのです。古い楽器を使うのは自分の成長を貴重な機会です。
☆「バイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品108」ブラームス:作曲
☆「バイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 作品47「クロイツェル」から第1、3楽章」ベートーベン:作曲
☆アンコール 「ヴォカリーズ 作品34第14」ラフマニノフ:作曲
🎵けさの聴きどころは、2台の名器、ただどんなに録音技術が優れていても、空気感、空気への親和感、ごく繊細な部分は捉えかねるものかとも思うが、しかし、楽しむにそう欠けるところはないと思っている。ブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 op.108」、これが1730年製グァルネリ・デル・ジェス「Ex.ズッカーマン」での演奏。ベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ 第9番イ長調 op.47『クロイツェル』」、この番組編成は1,3楽章。これが1730年製ストラディヴァリウス「トリトン」での演奏。ブラッハーは2台の名器との相性を探り出し鳴らし続けているわけだ。
「トリトン」はキミコ・パワーズ氏より貸与されている。「トリトン」とは20年来の付き合い。このキミコ・パワーズ氏に興味がわき、ググってみると、「長野県に生まれ。国際基督教大学卒業後、ブリティッシュ・エアウェイズに入社。客室乗務員として勤めた後、1963年にニューヨークに渡る。夫のジョン・パワーズ氏とともに、日本美術と現代美術のコレクションを始める。特にアメリカン・ポップ・アートにおいては、黎明期の1960年代からパトロン、コレクターとして積極的にかかわり、世界最大級のポップ・アート・コレクションを築く『アーティストたちとの会話 アメリカン・ポップ・アート誕生の熱気』より」とあった。
それにしてもたとえ貸与であるにしろ、1丁の名器を手にすることも容易ではないところ、コリヤ・ブラッハーは一人で2台も。曲により気分によって使い分けているという、なんという贅沢さ!
音楽界は音楽世界のみならず、さまざまな人材、或いは産業、業界との連関にあることを実感。
きょうは、狂おしさが鮮烈な響きにあふれるように描出されていくところにすっかり取り込まれてしまった。説得力ある演奏。
🎧名曲アルバム。ドビュッシー「月の光」。ピアノ岡田奏
ヴェルレーヌの詩に霊感を受けて書かれたという。
あなたの心は 並はずれたひとつの風景――
仮面をつけた人々が あでやかに
リュートを奏で ベルガマスクを踊るけれど
おどけた仮装の下には どこか悲しみがただよう。
恋の勝利や 波に乗った人生を
短調の歌で歌いながらも
彼らはみずからの幸福を信じてはいないようだ、
そしてその歌声は 月の光に溶けていく、
木々にとまる鳥たちをも夢見させ
大理石像に囲まれたすらりとした噴水たちをも
恍惚のうちにすすり泣かせる
静かで悲しくて美しい月の光に。
⛳久方ぶりに聴いたという実感が得られた。聴く側にゆとりがないと、聴いても味わいがない一定時間を過ごすというだけのことになる。
いまはもう5時には陽がのぼっているし、朝の光のドラマが周囲の緑に展開されている。1年中で最も美しい。この明るい緑が深い緑に変わる前に、今の景色を心に留めたい。
前のに書き足しで、今はずっとそうだけれども、6時20分更新
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