220406 クラシック俱楽部を聴く 江口玲 アメリカに心を寄せて
アメリカ同時多発テロから20年。NYを拠点に活動してきた江口玲が思いを込めて演奏する。【収録】2021年4月15日 東京・めぐろパーシモンホール 小ホール
【曲目】
なつかしいウィーン(ゴドフスキ)
ノクターン(ホフマン)
メロディー、幻想的クラコーヴィアク(パデレフスキ)政治家
前奏曲 作品32 第12(ラフマニノフ)
パガニーニの主題による狂詩曲から第18変奏(ラフマニノフ/江口玲)
4羽の白鳥の踊り(チャイコフスキー/ワイルド)
小犬のワルツによるパラフレーズ(ミハウォフスキ)
ジャズボ・ブラウン・ブルース(ガーシュウィン)
ザ・マン・アイ・ラブ(ガーシュウィングレンジャー)
ラプソディー・イン・ブルー(ガーシュウィン/江口玲)
―番組紹介よりー
クラコーヴィアクはポーランドに伝わる舞曲
パガニーニの主題による狂詩曲から第18変奏、壮麗な感じも。
ワイルド、ロマン派最後のピアニストとも
ミハウォフスキはポーランドの作曲家、教師。聞き分けのないやんちゃな子犬
江口玲
東京芸術大学作曲科卒業。ジュリアード音楽院ピアノ科大学院修士課程、プロフェッショナルスタディング終了。その後NYと東京を行き来しながらソリスト、室内楽奏者、伴奏者として多彩な活動を。2001年9月11日アメリカ同時多発テロが起きた時、ニューヨークで暮らしていた。あれから20年となる2021年当時のアメリカに思いを寄せながら名曲の数々を演奏する。
江口玲のコメント
<プログラムについて>
前半に入れたクラシックの小品たちというのは、実は作曲した人たちが、みんなカーネギーホールに由来のある人たち、ピアニストたちなんですよね、作曲家というよりもピアニストたち。いわゆる1890年から1900年代の初頭を、ピアノとしては、後期ロマン派からいわゆるいちばんロマンティックなこてこてのロマン派のピアニストたちがいっぱいいた時代というんですかね。ゴドフスキはカーネギーホールが公式にオープンするより前にそこで非公式なリサイタルを一番最初に演奏したピアニストだったり、あとホフマンもパでレフスキーもみんなアメリカでデビューというかコンサートはカーネギーホール、ラフマニノフもそうですし、そういう由来をもって選んでみました。
<このとき江口が弾いたピアノについて>
ホロヴィッツが来日したときに使ってたピアノなんです。今縁があって日本にあって、アクションとか鍵盤すべてそのときのまま、もう丁寧に保管されてきて、今でもこうやって使える楽器なんですけど、1912年に作られた楽器、いうなれば、今日弾いた作曲家たちが大活躍してた時代ですね。ですからもう彼らと一緒にこれがよみがえってきたような感じは自分の中でしてます。
<ガーシュインについて> 自分の中でガーシュインという作曲家を過小評価してたところがあったんですが、弾いてみたら何て美しいメロディーを次からつぎへと書く人だろうっていう、最初の「ジャズボ・ブラウン・ブルース」ってうのは、あれはポーギーとベス、オペラの、一番最初に出てくる曲なんですけれども、残念ながら上演される際にそこの場面カットされてしまうことが多いんですよ。でもあんな素敵な小品があそこピアノのソロなんですよね。酒場で弾いてるという、これはたぶん聞いたことある方あまりいらっしゃらないんじゃないかと思ってぜひこれ入れてみたいなと。とってもガーシュインらしい曲だなあと思って。2曲目に「ザ・マン・アイ・ラブ」を入れたんですけど、これは「ラプソディー・イン・ブルー」が時々クラシックとジャズの間に挟まっているみたいなことを時々いわれるんだけれども、そこの中に含まれているメロディーというか、イディオムというものが、やっぱりガーシュインがとっても好きだった音型というものがいっぱいあって、それの一つとしてこのメロディー、いろんなところに「ラプソディー・イン・ブルー」にも出てくるので、とてもきれいな曲だなと思っておりました。「ラプソディー・イン・ブルー」は必ず最後に入れたいなと思って。改めて久しぶりに弾いてみたという感じなんですけれど。
そうですね、自分がNYで家族と一緒に過ごしている何十年かの歴史ですか、そういったものが今頭の中によみがえってきたような気がしてます。
<アメリカ同時多発テロの記憶、当時江口は家族とともにニューヨーク暮らしだった。そして今のアメリカについて>
あの日のことはほんとうにはっきりよくお覚えていて、というのは実は上の娘が幼稚園に登園する最初の日だった。ものすごくいい天気で、さあ今から行こうかと言ってたときに、そういうことが起こって、学校の方に確認したところが、学校の方は何にもわかってなくて、当たり前でしょ、みたいな感じ。で、時間が経つにつれて緊急車両などの数が増えてきて、残念ながらやっぱり幼稚園のご家族の方も犠牲者何人か出てしまって、大変なことがここで起こって、それを境に世界がやっぱり変わってしまった。
それをきっかけにアメリカはものすごく国として団結してた。テロに立ち向かう。なんだけれど、今、完全に分断されてます。この20年の間、ここ数年の間なんですけども。なぜそうなってしまったのか。私がアメリカの人たちに願うこととして、一つの大きな国の人として、その隣の人、移民で成り立ってる国として隣の人を尊敬すること、そして一人ひとりアメリカ人としての誇りを持ってそれを生きていってほしいなということ。ほんとに今の状態、一部の人だと思うんですけど、アメリカ人としてとっても恥ずかしいと思うことがあります。今はそんなことを考えてますね。
▽アレクサンドル・ミハウォフスキ(1851~1938)はポーランドのピアニスト、教師。主にポーランドとロシアで活動。ショパンの弟子の薫陶を受け、ショパン演奏家として名をはせた。ショパンの作品に超絶技巧を加えた編曲を数多く行っており、「小犬のワルツによるパラフレーズ」もその一つ。
🎵江口玲さんはクラシック倶楽部の顔。どなたかとの共演で登場するたびに、どんな音楽傾向をお持ちの方かと思っていたけれども、きょうは共演者のいない立場でのプログラム選択と演奏。ピアノになぜロゴが入っていないのだろうと不思議に思っていたところが、例外的にピアノの内側に刻まれていた。スタインウェイ。これがホロビッツが所有していたピアノであるというから驚く。カーネギーホールに所縁のある音楽家たちというブログラムもおもしろい。また様々な編曲のバリエーションも楽しかった。最後の「ラプソディー・イン・ブルー」の編曲が進むごとに軽みがミキサーされ、クラシックの重みが実線のように輪郭を隈取り、存在感となってのこった。
9・11当日のもよう、直にNYにいた方のはなし、あれから20年、アメリカ軍はアフガニスタンから撤退。まさかのタリバンのアフガン征服。今はウクライナの封じ込めに必死。強いアメリカなのかどうか、日本が宿りたい大樹の陰とするには危うさ脆さが。根強い人種差別、問題化したのはまだまだ氷山の一角。けさは音楽を通してさまざまなことを考えさせられた。
🎧名曲アルバム。「歌劇〝カプレーティとモンキッキ〟から〝おお、いくたびか〟」ベルリーニ作曲あ
(ソプラノ)砂川涼子,(管弦楽)東京フィルハーモニー交響楽団,(指揮)現田茂夫
ヴェローナはロミオとジュリエットの舞台。この物語もロミオとジュリエットが題材となっている。
⛳花粉、跋扈。
春嵐 コロナ花粉が 入り乱る
一市民が銃を乱射すれば警察が逮捕する。一市民が心病み常軌を逸すれば精神科医の処方箋が出る。隔離されるかもしれない。非常識な人には親族、友人が説得にあたることもあるだろう。しかし核を握る一国の元首には大量殺戮を日々目にしながら、誰も即座には手も足も出ない。席を蹴って助けに駆け付ける者がいない。奇態なものだ。
11時21分更新
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