220404 クラシック倶楽部を聴く ピアニスト 小山実稚恵の世界 I 〜心に響くシューベルトとベートーベン〜
日本を代表するピアニスト小山実稚恵。コロナ禍中ひとり向き合ったベートーベンのピアノ・ソナタ第31番。そして心のひだに染み入るというシューベルトの名曲を弾く。 東北出身の小山が音楽を見つめ直すきっかけが東日本大震災だった。そしてコロナ禍…。改めて感じた音楽の力とは―、演奏するということとは―。インタビューも紹介【曲目】4つの即興曲 D.935 第2番、第3番、4つの即興曲 D.899 第2番、第3番(いずれもシューベルト作曲)、ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 作品110(ベートーベン作曲)【収録】2021年6月23日 めぐろパーシモンホール 大ホール
小山さんのコメント
心の歌だし、想いが歌ですし、シューベルトの思いっていうのは、シューベルトの旋律そのものですし、作曲家の中でもほんとうに静かに心を打つといいますか、心のひだの中のひだに静かに入って来るこの感じとか、一回目と二回目とほんの少しだけ音が変えてあったりちょっとだけその場の様子で違うという瞬間がシューベルトにはたくさん出て来て、それがもうたまらなく好きですし、胸がきゅーっとつまるような思いで、シューベルトは最近弾いて、弾きながら、もうこんなことは言えないと思って弾いてます。
3・11被災地でのこと、そしてコロナ:私一寸そのとき、子供たちがピアノを聴いたりするのどうなんだろうと思ったら、二つの学校の先生が同じことを仰ったんですよ。一番持ってきた中で華やかなドレスを着てほしい、子供たちはとにかくわっとこうきれいなものとか楽しいことをとにかくしてあげて欲しいと。それが一番いろんなことを忘れて心から楽しいひとときになるから、といわれて、私、すごくこう胸は痛めてたんですけど分かっていなかったなあと。やっぱり音楽って、よいものだなあとか楽しいなあとか、いいなあと思うものじゃなくちゃいけないんだとその時ものすごく思って、そこで、なんかこう自分の音楽の感じ方っていうのも、2011年にすごく考えて、そしてまたここでコロナが起こって。
(小山さんがコロナで向き合った曲がベートーベンの31番。この曲に、小山さんは言葉では言い表せない深い悲しみを感じているという)第3楽章の嘆きの歌。その嘆きの歌がやっぱり、この事柄に嘆くとか、誰かの思いが悲しいから嘆くとかそういうことではなくて、なにかやっぱりもっと深い、もう何事と言えないものに二度嘆く。そして二回目の方はもう、とぎれとぎれになって嘆いて、だけどそこからこうフーガという緻密なものを組み立てていって、最後にはもうベートーベンらしい力が宿って来て全身がわーっとほんとうに心の下から勇気が湧き上がってくる。これはやっぱりもうベートーベンだからだし、人間だから感じられる感情だと思いますし、悲しいことに去年から今年コロナということが起こりましたけど、ベートーベンだってやはり耳が聴こえなくなる苦悩があって、苦悩の中の自分の在り方というものを見つけて、新しい自分の音楽が、逆に言うと聞こえてきたとか見えてきたということがあると思うので、やっぱりこの作品というのは単に傑作で素晴らしい作品だということだけじゃなくて、人類へのメッセージ、言葉にするとちょっと気恥ずかしいですけれど、音楽を弾くというのと、やはり人間であるから生きるということを思って弾くみたいな、そういう作品なのではないかなと思います。
🎵小山さんのピアノ、時として消えゆきそうな繊細さ、これがほんとうに打鍵によって作り出された音なのだろうかとさえ思うことたびたび。
被災地に足を運んでくれた方。
ベートーベンの31番、コメントをかみしめながら響きを共有。
🎧名曲アルバム。ヴィヴァルディ「四季 春」
バイオリン漆原朝子。飯森&東京フィル
ベネチアのピエタ教会には孤児院も兼ねていたが、楽団があった。彼らのために多くの作曲を。生涯に300曲以上のバイオリン協奏曲を書きながら彼の功績は次第に忘れられ、傑作「四季」が再び日の目を見たのは20世紀に入ってからだという。因みに彼の在世は1678 - 1741年。
🎵春が来ている。惨い酷い戦火のときにも。しぶとく蝕むコロナがあっても、春が来ている。窓の外にも、窓の内にも、確かに春が来ている。もしこれから先が秋だったら、もしこの先が冬だったら、思いはどんなに寒く、いよいよ暗く、わびしく、厳しかったろう。
20時28分
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