220318 クラシック倶楽部を聴く 小川典子 ドビュッシーを奏でる
イギリスと日本を拠点に世界的に活躍するピアニスト小川典子。今回は小川が愛してやまないドビュッシーの作品を集めた演奏を紹介する。
【曲目】
ベルガマスク組曲から「月の光」、喜びの島
映像第1集から「水に映る影」
前奏曲集 第2巻(以上、ドビュッシー作曲)
【演奏】小川典子
【収録】2022年2月28日 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
コメント
「映像第1集」ですけれども、私が子どものときに、NHKのリサイタルでアンドレ・ワッツが弾いていたんですよね。この映像第1集の「水に映る影」を聴いたときに、この世の中にこんなにきれいな曲があるのか、ほんとうに驚いて、それ以来この曲を弾いてみたいと思ってきた、私がドビュッシーを好きになるきっかけになった曲なので、映像第1集は今日入れたいなと思いました。
私は子どものころは、やはりバッハ、ベートーヴェン、ショパン、リストなど勉強をしてそういうものを積極的に練習しましょうと先生にも教えていただいたんですけれども、ドビュッシーはぜんぜん演奏する機会がなかった。だからこそ魅力があったかと思いますね。だからレッスンに関係なくドビュッシーの楽譜を開いて聴いたことのある曲をちょっと弾いてみたり、一人でほんとに隠れて弾いておりました。
弾く機会がありそうでなかなか無いのがドビュッシーで、特に前奏曲集 第2集というのは、機会がないんですね。やっぱりあの曲はほんとうに弱音が多くて、ずっと静かな曲が続くので演奏会でプログラムに入れると、やはりお客さんにとってもかなりハードなきょくになるので、どっちかっていうと大衆の方でというお話が多いんですね、それなので今回は好きな曲を弾けるということで、第2集を中心にプログラムを考えました。曲のタイトルが楽しそうでも、たとえば「月の光」のような前期の作品の耳馴染みのいいというよりは、音楽のアイデアを好きなように放り込んでいるようなそういう曲想になっているので、それは私にとって非常に魅力的です。題名は非常に映像を感じさせるような画集を読んでいくようなタイトルになっていますけれども、曲の音楽のつくりはかなり抽象的になっていっている。それが、その対比が私にとってはとても魅力があります。
今日の聴きどころはやはり前奏曲集第2巻ということで、内容をWikiから引いてみた。
第1曲 霧 - Brouillards
白鍵の和音と黒鍵の分散和音との短2度の衝突が生み出す響きを中心とした大胆な音量が模糊した情景を映し出す。このような技法で書かれた時期では、ドビュッシーがちょうどストラヴィンスキーのバレエ音楽『ペトルーシュカ』に感銘を受けており、その影響が見られる。
第2曲 枯葉 - Feuilles mortes
季節の秋、そして人生の秋の寂しさが映し出されたものと思われる。この曲では半音と全音の組み合わせによるオクタトニック(後年メシアンにより「移調の限られた旋法」第2番と名付けられた)をやはり曲中のほとんどで使用している。第1巻の『ヴェール(帆)』と同様の、その他全般的に五音音階の使用が多い。
第3曲 ヴィーノの門 - La Puerta del Vino
ハバネラのリズムのうちに激しい情熱と甘美さが交錯するスペイン情緒豊かな曲。ドビュッシー自身、スペイン風の曲をスペイン的に作曲するのが得意だったように、グラナダのアルハンブラ宮殿にあるワインの門をイメージして作曲された。
第4曲 妖精たちはあでやかな踊り子 - Les Fées sont d'exquises danseuses
妖精の軽やかな動きを変化溢れる音の運動のうちに表し出した曲で、ジェームズ・バリーの戯曲『ピーター・パン』のアーサー・ラッカムの挿絵からヒントを得たという。スケルツォ-ワルツ-スケルツォの三部形式の構成からなる。
第5曲 ヒース - Bruyères
牧歌風の旋律が美しく織り成された雰囲気豊かな佳品。この曲は、第1巻の『亜麻色の髪の乙女』と同様の、はっきりした調(変イ長調)で書かれており、装飾的で上品な曲に仕上がっている。なお、題名の『ヒース』は花の名前でもあるが、そのヒースが茂る荒野のことも意味する。
第6曲 奇人ラヴィーヌ将軍 - Général Lavine - excentrique
第1巻の『ミンストレル』と同様の、ケークウォークのリズムが用いられている。そのリズムを生かしつつ、アメリカの道化俳優の動きを巧みに捉えた機知に溢れる曲である。曲の冒頭のそれぞれ調の違う3和音の連続は、ストラヴィンスキーの音楽とも共通した「モダニズム」を表している。
第7曲 月の光が降り注ぐテラス - La terrasse des audiences du clair de lune
デリケートな和音と音の動きが月夜の情景を現出する。冒頭に現れる動機は童謡『月の光に』の引用である。複合旋法を用いている。
第8曲 水の精 - Ondine
ラッカムの挿絵に霊感を得て書かれたもので、多様に変化する細かな音の運動による幻想的な曲。冒頭に「スケルツァンド」と書かれてあるように、スケルツォ的な曲となっている。
第9曲 ピクウィック殿をたたえて - Hommage à S. Pickwick Esq. P.P.M.P.C.
チャールズ・ディケンズの小説『ピクウィック・ペイパーズ』の主人公をパロディ風に描いた曲で、イギリス国歌「神よ女王を守りたまえ」が引用される。
第10曲 カノープ - Canope
古代エジプトの壺・カノープから喚起される悲し気な幻想が平行和音の神秘的な響きの中から浮かび上がり、第7小節からは呟きや嘆きの声も聞こえてくる。時々使わう平行和音の連続は、死者への悲しみを表現している。
第11曲 交代する三度 - Les tierces alternéesこの曲のみ、他の楽曲のように叙情的な題名がつけられておらず、無機的な運動からなる曲である。これは後年のドビュッシー最後のピアノ独奏曲集となった『練習曲集』を予感させるものとなっている。フランス・バロック風のトッカータ的に書かれた曲。
第12曲 花火 - Feux d'artifice
本曲集の最後に飾る曲は、第1巻の『西風の見たもの』と同様のヴォルトゥオーソに書かれた難曲。7月14日のフランス革命記念日の情景。素早い音の動きのうちにドビュッシーの大胆な音響実験とピアノの名技性とが結び付いた曲で、「遠く lointain」の賑わいに始まり、夜空に炸裂する花火の投影を表している。最後の部分に、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が引用される。
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⛳網羅しかねながらも20時16分更新
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