211109 クラシッククラブを聴く エマニュエル・チェクナヴォリアン バイオリン・リサイタル
1995年生まれ。7歳でオーケストラとデビューを果たす。2015年シベリウス国際コンで第2位を受賞。ゲヴァントハウス管やサンクトペテルブルク・フィルなど共演多数。【演奏】エマニュエル・チェクナヴォリアン(バイオリン)マリオ・ヘリング(ピアノ)【収録】2019年12月1日 ハクジュホール で収録―番組紹介よりー
チェクナヴォリアンのコメント
ウィーンには日本の芸術家がたくさんいて、日本はまったく知らない国ではありませんでした。アルメニアでは父の助手が日本人でしたから、幼い時から日本はとても身近な存在でした。今回は日本で初めてのリサイタルなのでドイツやオーストリアを代表する作品でまとめました。
シューベルトは生粋のウィーン人です。きょうは二人のウィーンの作曲家で締めくくられます。この「華麗なるロンド」はあまりシューベルトらしくない作品です。シューベルトは歌曲、ピアノ・ソナタの作曲家として有名ですが、この曲は全く彼らしくない。ものすごく技巧的で歌曲のようなところもありますが、どこか「悪魔的」です。ピアノもバイオリンも非常に難しい最晩年の作品ですが、最後に突拍子もないものを書いてしまった感じ。演奏可能かどうかを考えずに湧き上がる音楽をそのまま書いたかのようです。でもすばらしい曲です。
曲目
ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 Op.24「春」 (ベートーヴェン)
ウィーン風狂想的幻想曲 (クライスラー)
華麗なるロンド ロ短調 D895 (シューベルト)
アンコールは愛の喜び(クライスラー)
エマニュエル・チェクナヴォリアンは指揮者の父とピアニストの母を両親に持つウィーンの音楽一家に生まれ、アルメニアに育つ。2015年シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールで第2位及び、ベスト・シベリウス演奏賞を受賞。使用楽器は、ベアーズ国際ヴァイリン協会から貸与された1698年製ストラディヴァリウス。2017年12月、ソニー・クラシカルからデビューアルバム「SOLO」をリリース。このCDが注目を集め、2018年10月には新設されたOPUS Klassik賞を錚々たる演奏家とともに受賞。2017年9月からは、オーストリアのラジオ番組で、毎月1回「Der Klassik-Tjek」というタイトルの自身のラジオ番組のパーソナリティを務めている他、北ドイツ放送、バイエルン放送や独仏共同出資のテレビなどにも出演している。
マリオ・ヘリング(ピアノ)は1989年ハノーファー生まれ。いずれもヴァイオリニストの両親は、父がドイツ人、母が日本人である。3歳からピアノを始め、樋口紀美子、ファビオ・ビディーニに学んだのち2009年よりハノーファー国立音楽大学にてカール=ハインツ・ケマリング及びラルス・フォークトへ師事。スタインウェイ国際コンクールやドイツ青少年コンクールで16回の優勝を飾っており、さまざまな奨学賞も獲得。2003年ベルリン交響楽団とベルリンのフィルハーモニーへ登場してオーケストラ・デビュー、大成功を収めた。巨匠パウル・バドゥラ=スコダが絶賛するドイツ若手ピアニストの注目株で、これまでにエルプフィルハーモニー・ハンブルク、コンセルトヘボウ、ウィーン・コンツェルトハウス、ケルン・フィルハーモニー、ベルリン・フィルハーモニー、コンツェルトハウス・ベルリン等世界有数の会場、キッシンゲン夏の音楽祭、ルツェルン音楽祭、スタインウェイ国際フェスティバル等著名な音楽祭へ出演。2012年名匠アレクサンドル・ラザレフの指揮で日本フィルハーモニー交響楽団と初共演を果たす。2016年ノエ・乾とのデュオアルバム、2018年2枚目のソロアルバムがそれぞれICMA国際クラシック賞にノミネートされ絶賛を博した。2018年難関として知られるリーズ国際ピアノ・コンクールにて第2位及びヤルタ・メニューイン賞受賞。
🎵「春」は「クロイツェル」と並んでよく奏される。深刻さはない明るさ。1801年というとベートーベンはもう聾疾を隠し切れなくなっていた時期で、それでもこの大きな悲しみのさ中に1800年には笑い声を立てているといわれる「七重奏曲」や明朗なと形容される「第一交響曲」が少年の日ののどかさを反映しているという、その一連の作品ということになるだろうか。1800~1801の作曲というと、ジュリエッタ・ギッチアルディーを恋していた時期。その幸福感も聴こえる。「月光」を彼女に捧げて彼女を不滅化したが、このジュリエッタは、ベートーベンに幸福感も与えたが、ロマン・ロランによると、実は「コケットで幼稚で利己主義であった」という。1803年にはガルレンベルク伯爵と結婚し、ベートーベンをどん底に突き落とした。「月光」の曲を返してと言いたくもなるのだ。この後、ベートーベンは1802年にハイリゲンシュタットの遺書を書いている。偉大な芸術家が作品を捧げた人物はいわば不朽の名声を得た形にもなるのだが、近頃は、誰それが誰それに何々を捧げたと知っても、捧げられた人物を安易にそれに値する人物であったとは思わなくなっている。すべては神に捧げておくのが最善なのかも。
「ウィーン風狂騒的幻想曲」、何とクライスラー70歳で作曲。出だしは玄妙、あとはゆったりと黄昏時を楽しんでいるような、鼻歌が聞えてきそうなところも。クライスラーはシェークスピア、当時一世を風靡した歌手カルーソーと並んで大いに迎えられた自らの人生に満足であったのでは。「華麗なロンド」をチェクナヴォリアンは「シューベルトの歌曲、ピアノ・ソナタの作曲からは彼らしくない作品であると。突拍子もなく考えもせずに湧きあがるがままに書かれている」とコメント。譜面の上ではいかに破天荒でも。これが言葉で表した場合には難儀なことになることも。アンコールの「愛の喜び」、この曲を当時の人々はどれほどに待ち望んだことか。ふたりのプロフィールはハクジュのコンサート紹介から。自分は70歳まで生きられればと思っていたが、クライスラーは70でこんな作曲をしている。
🎧名曲アルバムは、三木露風作詞、山田耕筰作曲、和田薫編曲「赤とんぼ」
テノール錦織健、現田&東京フィル
露風は兵庫県龍野生まれ。代々熊野の城に努め、祖父は寺社奉行。少年期に文学に目覚める。13歳の時赤とんぼへの思いを句に残す。5歳のとき母は弟を連れて実家に戻る。母への思慕、故郷への思いがこの「赤とんぼ」の32歳での作曲、完成となったか。大正10年のこと。
⛳9時24分更新
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