211012 クラシッククラブを聴く 小菅優 ピアノ・リサイタル
9歳でデビュー。2005年にはカーネギー・ホールで、2006年にはザルツブルク音楽祭でリサイタル・デビューを行う。ベルリン交響楽団、シュッツガルト交響楽団など多くのオーケストラト共演。高度なテクニックと美しい音色、深い楽曲解釈と優れた音楽性で注目され、世界の殿堂で活躍を続ける小菅の「今」を聞く。今回は「風」をテーマにしたリサイタル。―番組紹介よりー
小菅優のコメント
「風」というのは目に見えないもの。空気、それから語源などをさぐっていくと命とか魂とかいうふうにどんどん連想される幻想であって、すごく想像力が掻き立てられるところですね。「風」は今までやってきた のなかで一番内面的で一番ミステリアスで不可思議な世界だと思います。それでいて、奮い起こしてくれる強さもあって、すごく私は一番感性を揺すぶられるようなエレメントだと思います。
ベートーベンはずっと取り組んできた作曲家で、今回は「テンペスト」なんですが、すごく対話が激しい対話が1楽章にすごくあったり、なので「嵐」といっても心の嵐、ほんとうにベートーベンがハイリゲンシュタットの遺書を書いて、その後に、やっぱり芸術を絶対に残していかなければいけないという使命感も感じるほんとうに画期的な作品だと思います。
曲目
☆「クラヴサン曲集 第1巻 第3組曲から「かっこう」」ダカン:作曲
☆「カラヴィンカ」西村朗:作曲
西村朗は2006年にザルツブルク音楽祭で行われた小菅優のリサイタルのためにこの作品を書いた。カラヴィンカは極楽に住む人間の顔を持つ鳥。美しい声で人の魂を救済するといわれている。
☆「ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31第2」ベートーベン:作曲
ベートーベンは1802年にこのソナタを作曲した。当時の彼は難聴が悪化し自殺を考えるほど思い詰めていた。彼がこの作品の真意について秘書に、「シェークスピアの嵐を読めばわかる」と語った逸話から、嵐を意味する「テンペスト」という名で知られている。
☆「前奏曲集 第1巻から「沈める寺」」ドビュッシー:作曲
ドビュッシーは1909年から13年にかけて自身のピアノ曲の集大成とされる2つの前奏曲を書いた。「沈める寺」はブルターニュ地方の伝説をもとに作曲された。伝説都市イスの海底に沈んだ寺院が水上に姿を現し、聖歌や鐘の音を響かせてはまた沈む様子を表現している。
☆「前奏曲集 第2巻から「霧」」ドビュッシー:作曲
🎵「かっこう」、一瞬クラヴサンが鳴ってると。しかしたしかに鳴っているのはピアノなのだ。「カラヴィンカ」、実に印象的。透徹した、鉱物的な響きに目が醒める想い。小菅の10指に潜む鳥は飄然と翻って美しく、辺りをざわめかせる。周りの気配を察知し見抜き、玄妙に姿を垣間見せる。以前、小菅が打ち出す音をインド、東南アジアの打楽器に探したことが思い出される。自分の宗教とは異なるが、魂を訪ねあるく、何か巡礼的な感じもする魅力的な旋律、靄がかるところも明瞭に聴かせる小菅のハイテクニック。一応カラヴィンカという想像上の鳥というよりもその意味が気になり、つないでみた。「ピアノ・ソナタ 第17番」即ち「テンペスト」。これはもうハイリゲンシュタットのあと、しかし芸術はのこしていかなければならないとの思いと小菅。激しい対話、心の嵐、これはシェークスピアの「嵐」でもあると。鮮烈な演奏途上に第3楽章の魂を震わせる優しさには落涙。すばらしいベートーベン演奏にはベートーベンが現われると私は思っているが、この演奏にもあの面影が。現実はこうだが、しかしこうあらねばならないとつたわってくる。「沈める寺」、ブルターニュの伝説から。「霧」、小菅の真骨頂、繊細な色彩感が響く。
昨日のプログラム、クンウー・パイク75歳の演奏にもずいぶんと励まされたけれども、きょうの小菅の一曲一曲も明晰、鮮烈。一曲一曲のそれぞれをディスクにというよりも宝石箱にでもしまいおきたいぐらいのもの。
🎧名曲アルバムはカタルーニャ民謡「鳥の歌」。カザルス/栗山和樹編曲。チェロ金木博幸、円光寺&東京フィル
「魔の山と恐れられる奇岩の間にこの土地を守護する修道院がある。民族の言葉を禁じたフランコ政権時代もカタルーニャ語でミサを守り続けた。古くから伝わる民謡「鳥の歌」は誇り高いカタルーニャ人の象徴であり、名チェリスト、パブロ・カザルス(1876~1973)が見出した魂の曲である。フランコの圧政にあえぐ祖国の現状を世界に訴えるために、カザルスは万感の思いを込め、この曲を生涯弾き続けた。カザルスは貧しい幼少期をエル・ベンドレルに過ごした。貧しさの中にあってもカザルスの両親は民族の誇りと音楽への愛を大切にせよと教えた。父親はパブロ少年のために手作りの楽器を与えた。―番組から抜粋ー
🎵カザルスのエピソードは多々あるけれども、「カザルスの対話」にあったエピソードで、才能はあるけれどもマナーも悪ければ行儀作法もなっていないことで音楽仲間からも嫌われていた音楽家がいたのだが、カザルスは彼に何とか日の目をと手を尽くしたというはなしを思い出した。詳しく書きたいと本を探したが、どこにしまい込んだやら。
⛳12時53分更新
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