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210526 クラシック倶楽部を聴く エマニュエル・パユ フルート演奏会

89年神戸国際フルート・コン優勝以来、鮮やかな技術と流麗な音楽性で人気を博してきたパユ。今回はドイツ・バロックのテレマンと現代作品を交互に組みあわせた意欲的な公演。【演奏】エマニュエル・パユ(フルート)【収録】2019年12月2日 東京オペラシティ コンサートホールで収録番組紹介よりー

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 パユのコメント
フルート独奏の演奏会で方向性を一つに絞ると少し単調になりがちです。古典と現代の作品を交互に演奏することで、フルートの曲が時代を超えて作られてきたことがわかります。スピルチャルな目的や舞踏のため、それは人類の始まりにまでさかのぼります。それを聴きとることができるのです。テレマンとオネゲルやヴァレーズとの対比は聴衆にとっても興味深いはずです。いわば作曲家たちによる対話です。あなたの音楽の聴き方にも変化をもたらすでしょう。
私にとって舞台に上がることは、大道芸をするようなこととは違います。集中しなくてはなりません。独奏会ではなおさらです。徹底的に集中します。音符一つ一つに私の息と心を吹き込まなければ音は生まれません。責任は重大です。ですから演奏会は常に真剣勝負です。全身全霊を注ぎます。しかし音楽が楽しく跳びはねていたら私の心も躍ります。その喜びが私の演奏を通じて皆さんに伝われば嬉しいです。

曲目
☆「無伴奏フルートのための幻想曲 第1番 イ長調」テレマン:作曲
「比重21.5ヴァレーズ:作曲
「無伴奏フルートのための幻想曲 第10番 嬰へ短調」テレマン:作曲
「スクリーヴォ・イン・ヴェント」カーター:作曲
「無伴奏フルートのための幻想曲 第5番 ハ長調」テレマン:作曲
「めやぎの踊り」オネゲル:作曲
「無伴奏フルートのための幻想曲 第6番 二短調」テレマン:作曲
「ソナタ・アパッショナータ 嬰へ短調 作品140カークエーレルト:作曲
「無伴奏フルートのための幻想曲 第7番 二長調」テレマン:作曲

 

🎵今回のプログラム編成にパユの知見が。テレマン(16811767)の「無伴奏フルートのための幻想曲」、このバロックの響きをベースに巧みにそれぞれ個性の曲調の異なった現代曲を挿入し、飽きることなくバロックを際立たせ、それぞれの現代曲の特徴を際立たせ聴かせてくれた。

後期バロックに一世を風靡したテレマンの幻想曲第1番の次に「比重21.5(ヴァレーズ)、この次にテレマン第10番といった以上のような配列。「比重21.5」はプラチナの比重。解説では1936年フルート奏者のジョルジュ・バレールが新しく作ったプラチナ製のフルートのために作曲されたとか。尺八の節回しも感じられ、尺八の音域の事はわからないが、このような現代曲を尺八でやってみたら面白かろうと。「スクリーヴォ・イン・ヴェント」は「風に書く」の意。風がざわつく叢林に明滅させる光の屈折を写実的にとらえている感じが。異次元に足を掛けたかなと。「ソナタ・アパッショナータ」のカークェーレルトって、と思ったところに、ドイツの作曲家でありオルガニスと。この曲は1917年第一次世界大戦で知り合った友のために作られた曲と当意即妙な字幕解説。曲の終わりは「無伴奏フルートのための幻想曲 第7番」で、フルートの音が遠ざかっていくかに演奏しながらパユがステージの袖にすがたを消す。全曲無伴奏演奏という実力。ベルリン・フィルの首席であってみれば、当たり前といえばあたりまえなのだが、知見によるプログラム編成、演奏の質の高さに感銘。無伴奏フルートのための幻想曲は第10番がいちばんよかったが、この10番を次のベースに入れたことで、テレマンはこんなにいいものだよ、だから続けて最後まで聴きなさいというパユのお勧めが。

ネットにはこの番組から、作曲者、演奏家、曲目の解説、感想までみな出ている。パユがいうこれら作曲家たちの作品が時代を超えて響き合うのは、空中によく響き音がとおっていくフルートという楽器の特徴にもあるかとも思われた。無伴奏の幻想曲が体質的に合う。それにしても「比重」のネーミング、無機物的なネーミングがこの世界ではぎらりと光を放つという効果が。カーターの最強音、どきりとさせて素知らぬ顔で波を引かせてしまう見事さ。「めやぎの踊り」、これも言葉にすれば物議を招きそうだが、音の世界、音楽にしてしまうと振り上げられる拳もするりとかわせるというか、言葉は難儀なものだが、その点音楽は広く幅を利かせられるという感じが。パユのフルートは音の曳き際に余韻、味わいが。

🎧名曲アルバムはラヴェルの「マ・メール・ロア」から「妖精の国」。北原幸男&東京フィル。
写真は「妖精の国」ではなく、個人的な備忘録に「火の鳥」がパリ芸術座で初演されたときの2枚。

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⛳9時13分更新

 

 

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