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210426 クラシック倶楽部を聴く 三村奈々恵 マリンバ・リサイタル

クラシックからポップス、民族音楽まで幅広いジャンルで活躍するマリンバ奏者、三村奈々恵。ニューヨーク・カーネギーホールでのデビューリサイタル以来、欧米やアジア、中南米など20におよぶ国々で演奏活動を行ってきた。演奏も録音もされずに埋もれていたという吉松隆の幻の作品「バードスケイプ」、そして原譜に立ち返って編曲したというバッハ「シャコンヌ」ほか、三村奈々恵による変幻自在なマリンバの世界をお送りする。―番組紹介よりー

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三村奈々恵は国立音楽大学を卒業後、アメリカへ渡りボストン音楽院で学ぶ。1999年に若手音楽家の登竜門ニューヨークのコンサート・アーティスト・ギルド・コンベクションョンで最高位を受賞。その後カーネギーホールでのリサイタルをきっかけに世界的に知られるようになる。欧米やアジア、中南米など各地でコンサートを開き、国際コンクールの審査員を務める。マリンバのオリジナル作品を演奏するばかりでなく、他の楽器の曲をマリンバ用に編曲することにも力を入れている。そこにはマリンバに対するさまざまな想いがありました。

三村奈々恵のコメント
なぜ私のレパートリーが編曲が多いかというと、やはり、このコンサート・マリンバのためにはじめて楽曲が書かれたのが1950年以降です。だからクラシック音楽の分野ではピアノや弦楽器に比べると圧倒的にマリンバのために書かれた曲が少なくて、また、1950年以降なので、すべて現代音楽という分野に入ってしまいます。なので、私はバロック音楽も好きですし、そのクラシック以外のラテンっぽい音楽だったり、ジャズっぽい音楽だったりも好きなので、そういう自分の好きな曲を入れ込むとどうしても半分オリジナル、半分は編曲という構成になってしまいます。編曲する上において、自分でも常に奏法と言うのが、新しい奏法を研究してたり、生まれてくる。こういう音が欲しいなというときに新しいテクニックが出て来たりするので、そういうものを、あ、マリンバってこういうこともできるんだといのを、現代生きていらっしゃる作曲家の方に見て頂いて、マリンバのために新曲をどんどん書いていただきたいという思いがあります。
マレットはもう数えたことはないんですけれども、たぶん家には数百本あると思います。一つのコンサートでも、一曲一曲変えるので、一つのコンサートで30本から50本は普通に使います。じゃなんでそんなにたくさんのマレットが必要なのかといいますと、一本一本すべて出る音色が違うんですね。それは重さだったり中に入っている素材だったり巻いてある毛糸の種類、綿とかウールによってもまったく出る音が違ってきます。毛糸を巻いていないゴムのマレットも持って来たんですけれども、ちょっと音の違いを出してみます。これは大きくて重くて低音に適しています。やわらかい音がします。これをゴムのマレットでたたいてみると、(固めの音)。また硬いマレット、毛糸を巻いてある硬いマレットでたたいてみると全然違うんですよね。この低音に向いているマレットでたとえば高音をたたくと、マレットの重みに鍵盤が負けてしまって音がでない。この硬いのを使うと音が出るんです。だいたい4本持つんですけれども、4本ばらばらのマレットを持ったり、上3本同じでベースだけ変えたり、トップ中2本だけ変えたりとかさまざまな組み合わせて、とにかく曲に合わせてマレットは選んでいます。

曲目
「「フロム・マイ・リトル・アイランド」から「賛美歌」「ダンス・オブ・パッション」「フォークソング」」ロバート・アルドリッジ:作曲、ナンシー・ゼルツマン:編曲
「バードスケイプ 作品20」吉松隆:作曲
「ブエノスアイレスの春」ピアソラ:作曲、三村奈々恵:編曲
「トッカータ」アンナ・イグナトヴィチ・グリンスカ:作曲
「シャコンヌ」バッハ:作曲、三村奈々恵:編曲
「変奏曲「謎」作品36から「ニムロッド」」エルガー:作曲、三村奈々恵:編曲

🎵バッハがきっかけで音楽の道にはいったという三村。演奏ぜんたいにそれが感じられる。シャコンヌの編曲は三村が原点に立ち返っての仕事であるようだ。打楽器でこんなに深く聴かせられるものかと驚く、と書いてみて、驚くは適切ではないなと。目が見開かれると言った方が適切であるようだ。マリンバのために曲が書かれるようになったのは1950年以降で、クラシックの多くが編曲を要する。楽器の性格上もそうなるのだろう。演奏でこういう音が欲しいなと模索する中で新しい奏法が産み出されるのだという。ゴム、布、毛糸などの様々な素材のマレットを数百本所有しているようだが、一つのコンサートで使うのは3050本を曲に合わせて選んでいる。冒頭の「フロム・マイ・リトル・アイランド」、これは1988にできたマリンバのための作品で、「賛美歌」の静謐な中に奥行きのある響きに魅せられた。「ダンス・オブ・パッション」、水滴が幾とおりもの色彩を帯びてダンスのリズムさながら滴り落ちる様が浮かんだ。マレットの一音一音が感性に優しく落ちる。吉松隆の「バードスケイプ 作品20」、マリンバのための作品だが、長く知られずにいたのを2016年に三村が着目し光を当てる。森の生き物たちの息遣い、鳥が飛び立ったあとの木の葉の微妙な揺れ、陰影までが聴こえる。写真にある、見慣れない生き物、森の音を具現するための鳴り物、これが吉松の音の追求から作り出されたものか、或いは、三村がこの曲の細部のことごとくを描き出すために三村によって考案されたものかは分からないが、思えば10個ほど並んだこの仕掛けが、単純なようで緻密なものすごい仕掛けと思われてくる。「トッカータ」の高音域はピアノのようでもあり、低音域に移ってまた馥郁とした響きがひろがっていく。マリンバの可能性を知らされた。「シャコンヌ」、水底から気泡のように立ち上ってくる、それが時間の観念と相まって埋めがたい音の間隙を埋めてくれていたという感じが。この辺りに至って音の追求の並々ならぬ一途さ、熱心、好奇心、追及心に思わず落涙。

🎧名曲アルバム。オネゲルの「パシフィック21」
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⛳次の段取りが急がれる。きょうはガラス拭き。8時開始予定。それがもう時間が過ぎている。頑張って硝子のくもりを拭きとり、ついでに自分の曇りも拭き取りたいもの。汗は余計なものを一緒に流し去ってくれるといえば月並みで、これは幻想かといえばすこし面白みも出るだろうか。三村の「ニムロッド」の静寂に浸潤していくような響きをイヤホンで耳にしながら。8時22分更新。

 

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