210202 クラシック倶楽部を聴く リナ・トゥール・ボネ&ムジカ・アルケミカ 演奏会
スペインのバロック・バイオリン奏者リナ・トゥール・ボネの演奏で、バロック期の作曲家ビーバーの大作「ロザリオのソナタ集」からお送りする。聖母マリアの秘跡を題材にしたこのソナタ集は第一曲と終曲を除くすべてがそれぞれ異なるスコルダトゥーラ(変則調弦)で書かれ、当時のバイオリン技術の集大成と言われた難曲。ボネ自身が創設したアンサンブル「ムジカ・アルケミカ」との共演で、二夜にわたる全曲演奏会の第1日を。ー番組紹介よりー
リナ・トゥール・ボネ
スペイン、イヴィサト生まれ。父の手ほどきで3歳から音楽を始め、フライブルク大学、ウィーン大学で学ぶ。バロックから現代にいたるまで幅広いレパートリー。多くの著名な演奏家と共演。現在めざましい活躍を見せるバイオリニスト。またリナ・トゥール・ボネは新しい表現の形を求めてアンサンブル「ムジカ・アルケミカ」を設立。人形劇や詩人といったほかのジャンルとの共演を通して音楽の可能性を追求し続けている。「ムジカ・アルケミカ」は曲によって演奏者が変わるフレキシブルなアンサンブル。きょうは5人のメンバーが演奏。
曲は聖母マリアの秘蹟を題材にしたソナタ。第1曲と終曲を除くすべてが異なるスコルダトゥーラ、変則調弦で書かれた作品。
リナ・トゥール・ボネのコメント
スコルダトゥーラについて
スコルダトゥーラとは、あえて調子を外してバイオリンを調弦することです。きょうは4丁のバイオリンを使い分けて演奏します。一つの曲が終わるたびに調弦を変えることで、いろいろな音をだすことができます。
前半の曲について
まず天使が翼をはばたかせて入ってきて聖母マリアの胎内にキリストが宿っていることを告げます。ソナタ第3番はキリストの降誕です。暗いハーモニーの中で輝き鳴り響くようなスコルダトゥーラに調弦され、まるで全体が暗い中かごの中の幼児のみが輝いているバロック様式の絵画のような印象をこの響きの中で聴くことができます。第4番はキリストの神殿での拝謁です。神殿を訪れたキリストは、これから困難な運命をたどると告げられ、聖母マリアは心臓を突き刺されることになるといわれる場面です。辛く悲しい雰囲気を持った美しいソナタです。ソナタ第6番から悲しみの旋律が始まります。不協和音に調弦したスコルダトゥーラがバイオリンを震えさせます。キリストが震えたようにバイオリンも震えるのです。血の汗がポトッポトッと落ちる感動的な場面です。ソナタ第7番と第8番は映画でいえば悪役です。ここではキリストが鞭打ちにされる様子を聴き取ることができます。演奏している私たちが酔っ払いに見えるところもあります。キリストの背には血がにじみ痛みを口にする場面もあります。罰を受けたキリストの姿を表す「この人を見よ」の場面です。バイオリンの弦が張りすぎて1オクターブだけになってしまいます。いちばん低い弦が5度上がってピンと張った状態になり、最後の弦も同じ状態になって、そしてしだいに緩んでいくのですが、叫びたいという気持ちをこの弦で表現しているのです。
☆「ロザリオのソナタから 第1番 受胎告知」ビーバー:作曲
(バロック・バイオリン)リナ・トゥール・ボネ、(テオルボ)トーマス・ボイゼン、(ヴィオラ・ダ・ガンバ)パトヒ・モンテーロ、(ハープ)西山まりえ、(オルガン)ユージン・ミケランジェリ、(チェンバロ)アンヌ・マリー・ドラゴジッツ
☆「ロザリオのソナタから 第3番 降誕」ビーバー:作曲
(バロック・バイオリン)リナ・トゥール・ボネ、(ハープ)西山まりえ
☆「ロザリオのソナタから 第4番 拝謁」ビーバー:作曲
(バロック・バイオリン)リナ・トゥール・ボネ、(テオルボ)トーマス・ボイゼン、(ヴィオラ・ダ・ガンバ)パトヒ・モンテーロ、(ハープ)西山まりえ、(オルガン)ユージン・ミケランジェリ、(チェンバロ)アンヌ・マリー・ドラゴジッツ
☆「ロザリオのソナタから 第6番 オリーブの山での苦しみ」ビーバー:作曲
(バロック・バイオリン)リナ・トゥール・ボネ、(テオルボ)トーマス・ボイゼン
☆「ロザリオのソナタから 第7番 鞭打ち」ビーバー:作曲
(バロック・バイオリン)リナ・トゥール・ボネ、(テオルボ)トーマス・ボイゼン、(ヴィオラ・ダ・ガンバ)パトヒ・モンテーロ、(チェンバロ)アンヌ・マリー・ドラゴジッツ
☆「ロザリオのソナタから 第8番 茨の冠」ビーバー:作曲
(バロック・バイオリン)リナ・トゥール・ボネ、(テオルボ)トーマス・ボイゼン、(ヴィオラ・ダ・ガンバ)パトヒ・モンテーロ、(オルガン)ユージン・ミケランジェリ、(チェンバロ)アンヌ・マリー・ドラゴジッツ
第1番 受胎告知、第3番 降誕、第4番 拝謁、第6番 オリーブ山での苦しみ、第7番 鞭打ち、第8番 荊の冠
🎵ボネが後部観客席からの登場、ステージへ。ボネのバイオリンは闇を貫いていく1条の光。寄り添い奏でるテオルボ奏者トーマス・ボイゼン、ヴィオラ・ダ・ガンパ奏者バトヒ・モンテーロ、チェンバロ奏者アンヌ・マリー・ドラゴザッヴ、オルガン奏者ユージン・ミケランジェリ。スコルダトゥーラが「降誕」のところでは、一通りではない響きの変化の妙味もあるが一種のわりきれなさ霧のように弦の奥から湧きでてくる感じもある。「拝謁」では聖画のように薄闇に光に静まりあるものへの愛情と厳粛さ、聖なるものへの畏れもあり、むしろこちら側の聖なるものへの態度のありようが問われる。「オリーブ山での苦しみ」、血の汗が弦に滴る。バイオリンの緊迫感を和らげるかにテオルボ。「鞭打ち」、この周りのざわめきと感じられる響きのうちに人々のあざけりの笑いが。「鞭打ち」、ここで、ああ、これは神に捧げられている演奏なのだと。「荊の冠」とでこれはシスターのバイオリン、弦をもっての献身であると感じられた。
🎧名曲アルバム。サティ「あなたが欲しい」アンリ・パコリ作詞。挟間美帆・編曲
「おそるべき粗悪品」といいつつ流行歌的なものも作曲したサティ。
⛳7時2分更新。緊急事態宣言一か月延長のニュース。
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