210128 クラシック倶楽部を聴く アンドレイ・ガヴリーロフ ピアノ・リサイタル
1974年18歳の時にチャイコフスキー国際コンクール優勝。同年のザルツブルク音楽祭でリヒテルの代役を務め脚光を浴びる。6年の活動休止時期を経て復活を果たした。【演奏】アンドレイ・ガヴリーロフ(ピアノ)【曲目】ノクターン 変ロ短調作品9第1(ショパン)ピアノ・ソナタ 第8番(プロコフィエフ)幻想曲 ニ短調 K.397(モーツァルト)ほか【収録】2020年11月15日 武蔵野市民文化会館大ホール―番組紹介よりー
アンドレイ・ガヴリーロフ
1955年モスクワ生まれ。モスクワ中央音楽学校でタチャーナケストナーに、モスクワ音楽院でレフナーモフに師事。1974年18歳でチャイコフスキー国際コンクールで優勝。1994年から演奏活動から離れ、哲学、宗教を研究し新たな音楽を模索。2000年演奏活動開始。2001年モスクワ音楽院大ホールで一夜で4つのピアノ協奏曲を演奏し復活。
コメント(抜粋)
30代でロンドン・ドイツ・ニューヨークに住んで世界を旅して得た結論は、音楽の世界が深い停滞の中にあるということでした。もっとも悩ましいのは、音楽・演奏の世界がすべて感覚に基づいていることでした。私は音楽作りの科学を打ち立てたかった。音楽言語を読む科学です。それは音楽を言語として理解するレベルにまで発展させることです。大変困難でリスクもあるが、もう一度ゼロから始めるという思い切った決断をしました。殻を破り新しい音楽の哲学を作りたかった。
私はリモート・コントロールで、聴衆と亡き人々の魂をつなげています。トンネルを作り彼らの意思を伝えています。
プロコフィエフの「ピアノ・ソナタ 第8番」について、彼はこの作品でついに真の作曲家に成長しました。これまで使用したさまざまな音楽言語や作曲様式を止めました。非常に簡潔な音楽形式に発展させたのです。
ノクターン 変ロ短調作品9第1(ショパン)
ノクターン 変ニ長調作品27第2(ショパン)
ノクターン 嬰ハ短調 遺作(ショパン)
ピアノ・ソナタ 第8番変ロ長調作品84(プロコフィエフ)
アンコール 幻想曲 ニ短調 K.397(モーツァルト)
🎵当年66歳。1994年に音楽活動を離れたいきさつをちょっと聞き落したかとも思うが、そこが肝心なところではあった。演奏に行き詰まったのか、持っていた疑問が頂点に達しそのままではいられなかったのか、それにしても演奏家が活動を止めるというのは命がけ。
「ノクターン 嬰ハ短調」、これは演奏の質如何に関わらず、もう聴こえてきただけで心揺さぶられる。この曲が貴族ではなく姉に捧げられているところも自らの内ではこの曲の好感度を高くしている。この辺りは、仮に、もう一つや二つキーの打ち間違いがあろうともどうということはない。
「ピアノ・ソナタ 第8番」1939~44年までに作られた「戦争ソナタ」のうちの一つ。とはいうものの、6,7番の曲調がどうであったかは曖昧なのだが。このプロコフィエフの8番こそがアンドレイ・ガヴリーロフが引っ提げて来日したものと納得。命の本質を見極めようとしたとの番組の解説もあったが。第一楽章、なぜだ! 不条理を神に問うと聴こえる。打ちひしがれる人々のすがたが映像的に感じられ、戦争のありさま、成り行きが。第二楽章は嵐が過ぎ去ったかの小康、明るさが。短めの楽章に平安を求める想いがこめられ。第3楽章先行きを求め模索し動き出す。プロコフィエフの真髄と、アンドレイ・ガヴリーロフのプロコフィエフは本物と得心。戦争のトラウマも超えて困難を激しく克服していく。時折ふと顔をあげてあたりの景色に心和ませながら力強く踏みしめる大地にロシア的な響きが。プロコフィエフが発展させた音楽形式とはまさしくこれだ! 実にすばらしかった。
渾身の大曲を引き終えて、沸き立つ観客、歓声を聞きながらも、次のモーツァルトにすっと入っていく。もう頭が次の曲に。切り替えの鮮やかさ!
🎧名曲アルバムはバッハのブランデンブルグの5番。5番はチェンバロ中心。雪のケーテン。バッハは歩いて10分のケーテン城に通勤。ここでの30代は素晴らしく充実していたようだ。いまでも毎晩16人の楽団が毎夜コンサート。ところで、ケーテンのあのバッハの住まいは、あの建物ぜんぶを使用していたのかそれともその一部であったのか。
⛳プロコフィエフに目が醒め、書くことが心地よかった今朝。曇りなれど頭か心の内には広がる青空。ちょっとはエベレストも見、天気予報を聞きながら、7時ジャスト更新。
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