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幻の鳥

 けさ、はやめに家を出て、教会に行く前に高松の池に立ち寄り、写真を撮った。折しも、日の光が氷上を眩く輝かせ、氷と水の際も水面も美しい。白鳥たちが羽ばたきを見せている。立ち並ぶカメラ。いまぞとシャッターを切っている。遠くに、雪を積んだ連山も青みを帯びている。何枚もカメラに収めたつもりで、夕方、わくわくしながらカメラからカードを取り出そうとしたのだが、……ない! きのうパソコンに写真を取り込もうとして、パソに差し込んだままだった。すっかり忘れていた。ああ、あの水の輝きは? いま飛び立たんとする羽ばたきは? 鳥に餌をやっていた小さな少女と足元の鳥たちは? 三脚にシャッターを切るカメラ群は? みな幻と消えた。と思った瞬間、またまた一場面一場面が美しく思い出される。あの一瞬しかない美しさ、留め得なかった美しさが、いよいよ輝きをまして脳裏を過っていく。

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