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「秣(まぐさ)の桶」 三木露風 詩

 明治、大正の詩人たちを見ていくうちに、三木露風の詩が目に留まった。この時代の多くの文学者たちが、キリスト教の影響を受けている。

三木露風 詩

 

  秣(まぐさ)の桶

 

キリストが、
秣の桶で生まれた日。
ながはなたばこが咲いている。

 

目を開いたキリストが、
一に見たのは、るりのそら。
二に見たのは、ながはなたばこ。

 

開け放した扉(と)があいて、
きしきし鳴っている。
鳥がなく、
家畜(けもの)が、めいとなく。

 

秣の桶で、
赤ん坊のキリストが、
手をあけて、握った、ながはなたばこ。
かぞヘて見たら数が十。

 

         『こども雑誌』大正8年8月

   ☆

 ながはなたばこをウェブでさがしてみたが、ハナタバコは出ているが、ナガハナタバコでは見つけかねた。

 ハナタバコはナス科の多年草、別名ニコチアナ。丈は30~90㌢。花は6~10月。タバコに近い仲間。長い花筒の先に2~5cm星型の花を咲かせる。葉はやや大きめ、株はロゼットで花茎を直立させる。暑さに強い。

   ☆

 露風がなぜこの花を詩に詠み込んだのか、幼子イエスにこんな星形の美しい花がふさわしいと思ったものか、果たして、ほんとうにこの花をイメージして書いたのかどうかも判然とはしない。ただ、「数が十」で、この意味は、キリストの誕生でモーセの十戒が反故になるのではないという意味なのか、或いは、十戒をすべて守り得るお方という意味であるのか、そこのところは想像するのみ。

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