エンドレス
ベルリンの名門、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団選抜メンバーによる室内オーケストラ ▽率いるは若きコンサートマスター日下紗矢子
曲目がパッヘルベル:カノン、ヴィヴァルディ:四季、これはもう飽きるほど聴いているから聴かなくてもいいかなと思ってもいたのだが、惜しい気がして聴いてみると、やはり聴いてよかった。
わたしのヴィヴァルディの演奏でベースとなっているのは、ギドン・クレーメル。どれか一つを徹底的に聴きこんでおくと、それがほかの演奏を聴くときの、比較という意味ではなく、その曲の理解の仕方においてよい尺度になってくれるものだ。
日下さんにとっては弾き振り。コンマスが単にチューニングの基準音を指示をするばかりではなく、演奏のぜんたいにわたって、どこで次の音を出したらよいかなど、メンバーの事細かな質問にまで答えなければならない立場にあるとなると、日下さんがこの楽団にコンサートマスターとして迎えられた力量が推し量られることはいうまでもないだろう。
ヴィヴァルディはテキストを与えているというけれども、その内容の掘り起こしと日下さんならではの解釈が随所に感じられるクレーメルとはまた一味違った味わい深い演奏だと思った。この曲では、冬をどのように弾いてくれるかがいつも楽しみ。キンキンカンカンと凍てついた氷柱にきらめく光が春の予兆を感じさせてくれるのだ。そして冬が冬で終わるのではなく、春の兆しを宿すこの旋律は、終曲とともにそのまままた春の冒頭につながり胸中で鳴り始める。つまりこのヴィヴァルディの曲はエンドレス、わたしの中では、終わっても尚鳴り続けてゆく曲であることになっている。
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