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休んでばかりもいられない

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 あまり考えすぎるとキーを打つ手が止まってしまう。書けなくなるのだ。しかし可笑しなもので、更新を休んでばかりもいられないとまたぼちぼちとキーを押している。
 あまり考えすぎるというのは、これは個人情報に触れるかもしれないとか、自慢話のようで読み手が辟易するのではないか、こんな苦労話はどこにでもあるだろう、明るく楽しく愉快なはなしを書く方がいい、はたまた自分がこのことを書く深層心理は何? とここまでに及ぶともう何も書けなくなってしまう。そして考えれば考えるほど疲れ、疲れるころには眠くなっている。

 午後から会議がある日だったのでたしか2日のことだ。盛岡城跡公園の朝のラジオ体操にすこし遅れて合流、わたしのすぐ目の前で入念に四肢を動かしている女性の美しさが鮮やかな輪郭を帯びていま思い出された。私よりも一回りは年下と思われる。注意深く紫外線から保護されている白いうなじや腕、指先が眩しかった。その美しさと対極にあるわたしの体操すがたは、とても見られたものではなかろう。そのとき背中に大勢の人たちがやってきた気配が。上体をねじるときを30人はいるかと思われたが、高校生の一群だった。意気盛んな高校生の目に、わたしの目の前にいる美しい女性ならばともかく、わたしの後すがたが映ってしまうのかと思うと、ちよっと逃げたいような滑稽な気分になりながら最後の深呼吸を終えた。振り向いて「合宿ですか」と訊くと、「演劇部の朝練です。きょう10時から県民会館でやりますから観にきてください」という。「行きます」とわたしは即座に応えた。これまで何に対してもちょっと無理だなとか忙しいという思いが先だっていたのだが、珍しくそう応じていた。けさ起き掛けに、歩いて何になるのかなと、いつになく疑問が浮かんだ。「ともかく一歩踏み出さねば」。くだくだしい理由はなくとも、踏み出すという行動を採ることだと起き上がった。なにかその答えを得たような気がしていた。高校生の演劇、いまどんな事をやっているだろう、にわかに興味がわいた。
 10時に間に合って中ホールに。観客席はまばらだった。プログラムで上演時間を見ると、最初の発表が1時間20分間。後を考えると一つしか観られない。
 一番目の某高校、ステージが明るくなり、いきなりショッキングな場面が展開された。ひきこもり、自殺願望、それを取り巻く家族、友人、飛び込んでくる問題少年。初っ端でありきたりを排除したことがうかがわれる。一幕もの、畳一間の限られた空間での熱演、名演技に感心した。
 帰りしな「アンケートをお願いします」といわれ、一つしか観ておらず言うもはばかられたがその場で書いて差し出すと、女子生徒が受け取りながら「けさ体操に来ていた方ですね」。見ると「来てください」と言ってくれたあの生徒だった。挨拶を交わし、隣にいらした小柄で楚々と、そして芯のありそうな先生に「何しろわたしは『父帰る』の時代のものでして」と笑うと「どうぞ感想を」と仰る。率直に感じたとおりに申し上げたが、それも大変楽しいひと時となり、けさ一歩踏み出したその答えをもらった思いでスクーターのスタンドを外し帰途に着いたのでした。

 

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