営々と

ある方が「この庭にある花の図鑑を作ってみたら」と進言くださった。図鑑にするほどのものがあるだろうか。しかし気づいてみると、樹木や花ばかりではなく、雑草の一本にも本来は存在意義があり名前が付けられているのだ。草だけが生えている50㎝四方を切り取って、そこにどんな雑草が生えているかをみてみると、ハコベ、タネツケバナ、ヤエムグラ、センダングサ、オニタビラコ、ドクダミ、オオバコなど8種類もあった。こうしてみると雑草が雑草ではなくなる。図鑑で照合することはできても草をきれいに撮るにはさらに技術が要るだろう。草だけを取り上げるとしても、けっこう分厚い図鑑になるのではないか。
図書館で絶滅図鑑を見たことがある。その絶滅ではないけれども、この庭にかつて存在し今は絶えてしまった図鑑というのはどうだろうなどと、考えても意味がなさそうなこともつい連想してみる。ほかの植物を守るため、或いは建物を守るために除かれてしまったもの、栗、柿、さくらんぼ、ねむの木、桜、梅、林檎(フジ)。もみの木、松。土になじまないか不適切な取り扱いに遭って絶えてしまったもの、翁草、シラネアオイ、青い芥子、クロユリ、食用菊、芍薬、その他、記憶から消えてしまったものもある。何かのきっかけで思い出すこともあるだろう。そして名も知られぬままに駆除され生えなくなった草もあるはずだ。
このように書いてはみたものの、図鑑づくりは夢物語で終わりそうな現実となっている。
それにしても、この庭にある植物のどれかに勝利の宝冠を授けるとしたら、それはいったいどの植物に? 実はもうすでに私の中では決まっている。それはドクダミとスギナ。地下に強大な組織網を設け、管理人との熾烈な戦いに連戦連勝、人の世話を受けることなく、踏まれても抜かれても刈られても弱ることを知らない。今なお強靭に生き、これより後も英々と、営々とどこまでも生き延びていく気配なのだ。
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