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ドラゴネッティのコントラバス

 1825年イギリスのスマート卿がウィーンに行って、ヴァイオリニストのマイゼーダーに会って「第九」の発表のときの話を聞いたとき、「フィナーレの叙唱部で全部のバスが弾きましたが、本当はこれはドラゴネッティだけのために書かれたものだそうです」という話を聞いた。

ドラゴネッティはヴェニス生まれのコントラバス弾き。この楽器の歴史に残る最大の演奏家。ある朝、彼がベートーヴェンを訪ねると、ベートーヴェンはコントラバスソナタを聞きたいと言った。彼はコントラバスでベートーヴェンのチェロ・ソナタ作品5の2を弾く。ベートーヴェンはピアノを弾きながら、目はドラゴネッティの弓を見て離れなかった。そしてフィナーレでアルペッジョが始まると非常に喜び、曲が終わると興奮して、ピアノから飛び上がってコントラバスとドラゴネティとを一緒に抱きしめたという。それから数年というものは、コントラバスの力と可能性がドラゴネッティの演奏でわかったために、オーケストラのコントラバス弾きは、ベートーヴェンの指揮のときひどく痛めつけられたという。

 you tube に ベートーヴェン チェロ・ソナタ 作品5の2 がある。ピアノをベートーヴェンが、チェロはドラゴネッティが弾いていると思いこんで、というのもあまりに無理のあるはなしだが、そう夢想して聴いてみるとおもしろい。
 ベートーヴェンがドラゴネッティというコントラバス奏者にいかに狂喜し、低弦の作曲意欲を掻きたてられたことか。
 わたしがコントラバスという楽器の可能性の大きさを知ったのは、ナビル・シェハタの演奏を聴いたときだった。そのときの驚きと興奮は忘れられない。ベートーヴェンを知ろうとするうえでそれが役に立つとは、そのときは知る由もなかったが。

 ということで、今朝も楽しいひと時を持つことができた。いまちょうど7時だ。

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