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マルティン・シュタットフェルトのバッハ

 盛岡市、最高気温8℃。温かかった。ひと冬、居間で過ごしたが、きょうは午後から2階の息子不在の部屋や自室の掃除、ガラス拭きをする。どこに置いたらよいか迷うものをみな持ち込んだために、足の踏みどころもない。果たして半日で片付くのか。紙の一枚からの思いでやり始めた。雑誌や紙類をヒモで括ったり、捨てられる物をゴミ袋に入れたり、押し入れに引っ込めたり、棚に並べたりしてやっと掃除機をかける。数カ月ぶりにスッキリとした。

 久しぶりに、CDをかける。J.S.バッハのピアノ協奏曲第3番ニ長調。ピアノはマルティン・シュタットフェルト。

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 掃除を終えて窓を閉じた部屋の空気が変わった。この新鮮な響きは何だろう。外の青空と相俟って、空間を満たす未知の存在が静かにそれこそ秩序をもって粉々になり、それが微細で透明なかけらとなって空中に音を響かせるのだ。何て陽気で明るく広がりをもって駆け居るのだろう。ふと、この世から旅立つ時には、こんな音楽に送られたいと思った。飄々として現世に別れを告げられるのではないか。清々しい気持ちで次の明るい世界、光の溢れる世界に入って行く時には、こんな曲が流れていて欲しい。まったく活き活きとしている。

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