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障子

 八畳間には、廊下を隔てて雪見障子が4枚、外に面した出窓に4枚の障子戸がある。これを延べ日数4日間をかけて2枚ずつ貼り変えた。きょうはその第4ラウンド、残されている出窓側の2枚だった。
 障子戸を外して外に持ち出し、霧吹きで障子ののりをはがし、小さなタワシとハブラシを使って汚れを洗い流す。生渇き程度に乾かしてから室内に持ち込み、のり付けし、予め裁断しておいた障子紙をのせて上から軽く押しつけながら貼りつける。障子紙がだいたい乾いたら桟に立てかける、ざっとこんな手順だ。
 障子貼りの苦労を後継の者にはさせたくないと、障子戸を障子に似たガラス戸に変えたお宅もあった。いやはやとんだ時間潰しの建具もあったものだと嘆息しながら最後の一枚を仕上げていたところで、はたと、いったいどこの誰がこんな手間暇かかるものを考えだしたかに思いが及んだ。これほどの時間と労力をかけて貼り変えるなら、もっと楽しいデザインの薄紙にしたかったとも思った。

           

 障子は平安時代にはあったようだ。wikipediaには、「古来より、日本家屋独特のほの暗さの文化や陰翳の美を演出するものとして、日本 の建築文化の象徴的な存在であった。現代においてはインテリア としての再評価の他、ガラス戸との組合せによる断熱効果、紫外線 の軽減効果などで見直されつつある」と出ていた。
 今はデザイン的な障子紙もある。材質としては、超強プラスチック障子紙といったものもある。ネットのそこかしこを検索するうちに思い出したのは、去年だったろうか、ふだんは空疎とも思われるこの障子戸に、庭に繁る桂の枝葉のシルエットが風に微かに震えていたのだ。その風情がきよらかで美しく、これだとばかりにカメラに撮ったのだった。もし障子戸の向こうに、明るい光や鳥や樹木といった自然があるなら、障子紙はやはり白であることが望ましい。廊下との間仕切りであるなら、或いは部屋に明かりが灯っているなら、あたたかな人の影や子どもたちの指のキツネやウサギの影絵が見られるかもしれない。もし障子戸の向こうにビルの壁でも覆い迫っているようなときには、そのときこそ思いっきり絵画的で斬新なデザインの障子紙もいいだろう。

 いっときは手間暇ばかりかかる非合理的な建具だと思われたが、また今しばらくは、ぴんと張り直された真っ白な障子に映るシルエットと、にじみでるようなほのぼのとした明るみを楽しもう。

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