その十人のために
創世記のそちこちをアトランダムにめくっているうちに、18章のあの有名なアブラハムがソドムのために神に嘆願しているところに目が留まった。
アブラハムが、もし町に50人の正しい者がいたら、その者たちのために、町を滅ぼさないでくれるかどうかを神に訊くのだ。すると神は、もしその町に50人の正しい者がいたなら、その人たちのために、その町全部をゆるすと答えている。さらに、アブラハムが、45人だったら? 40人だったら? 30人だったら? 20人だったら? 10人だったら? と質問をつづける。神の答えは、「滅ぼすまい。その10人のために」であった。
私は、はたと思った。宗教は衰退しているかに見える。善人が愚直に見え、素朴に見え、正しいっていったい何? もうそんな考えは古い、力がある者が勝つのよ。そんな放言さえ聞こえてきそうだ。しかし、いま自分たちが生かされているのは、苦しくとも正しく生きよう、みな離れていくとも伝道しよう、そう努力しつづけて生きているごく少数の人たちのお陰なのではないか。
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