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立川ゆかり氏の『是空の作家・光瀬龍』連載第12回ーSFマガジン1月号(早川書房)ー

いわての文芸誌『天気図』を率いる編集長である立川ゆかり氏の『是空の作家・光瀬龍』連載第12回(SFマガジン1月号 早川書房)が出ました。
 
立川氏の躍進は、即ち『天気図』同人の躍進にもつながると、毎号応援しています。

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 今回は光瀬の代表作であり、また日本SFの傑作とされている『百億の昼と千億の夜』に論考を進めている。
 この中に登場するプラトン、悉多について、評伝の紹介者である私は、学生時代に概論に触れたのみで、理解し得たとは言い難い。ただキリストについては、一般の方々よりは若干理解しているとして許されるかと思う。このような紹介者で甚だ申し訳なくもあるのですが。 
  
 
『百億の昼と千億の夜』は、日本SF界がまだ助走期にあったときに発表さた。 それがゆっくりとファンを増やしていき、漫画家萩尾望都によって漫画家されるや大ヒットとなる。2011年には英訳本も出たようだ。
 今回は、この作品の外面と内面の両側面からの読み説きがなされ、感想が綴られている。

 さて、著書の中の
プラトン、悉多がともかくも目指したトバツ市、TOVATSU
E 
がどんなところなのか、立川さんはこれを解き明かすために、仏教の世界観をわかりやすく説明してくれる。そこにある山の途方もない高さ。そこには56億7千万年後に地上に降り、人々を救済するため修行中の弥勒がいるのだ。 ここから光瀬の宇宙的思惟を想わせられる小説世界が広がっていく。

 立川さんの読後の感想から、トバツ市が破局に向かう原因は阿修羅王だが、この阿修羅王はきゃしゃな少女、この傷だらけの美少女戦士に自らを投影させ共感する読者が数多くいるであろうと思った。また立川さんは、哲学、宗教を学びながらも、信仰と言う領域には至らなかった作家光瀬龍の本音をも汲み取っている。光瀬がどのような自らの存在意識を持っていたかもここで明らかになる。この作品から精神的救済を受けたひとは多いという。

 内面からの洞察に入っては、先ず
宮野由梨香さんの考察を引いている。作品には  妻千歳との恋愛と結婚の成り行きが投影され、結婚はしたものの葛藤と敗北感もあり、『百億の昼と千億の夜』』は、それらをぶち込んだ私小説だという見解だ。しかし立川さんは、この宮野論に疑問を抱く。真っ向からの論述に、私はそれこそ立川論は、光瀬世界正確に捉えかねた読者世界から光瀬文学を救済したとさえ思われた。その論拠が以下に縷々語られていく。この以下の大切な部分こそ是非本誌で読んでいただきたいところなのです。  
 
 

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