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榊原直・窪兼雅・竹岡鶴代・花島秀子ー関東大震災で被災支援に立ち上がった音楽家たちー

 某図書館では新聞もDVD化しているということだが、岩手県立図書館で久方ぶりに昔の新聞の閲覧を申し出ると、やはりまだマイクロフィルムである。それをからからと回しながら大正にタイムスリップ。東京朝日新聞だ。関東大震災は大正12年9月1日。マイクロ上では2日~11日までが欠番となっていた。新聞社が曲がりなりにも発行に漕ぎ着いたのは震災から10日経ってからということになる。焼け野原となった東京で音楽活動ができるとしたら……
 大正12年11月3日に音楽の記事が出てきた。
「若い元気を日比谷に漲らしたい
  四日、本社の為に出演する
     勇ましい音楽復興団」

 この見出しで登場した写真は榊原直。
榊原直がインタヴューに応えている。記事は以下の通りです。当時のピアノ事情なども分ります。

「31日に関西の演奏旅行から帰りました。北陸金沢を振り出しに福井、京都、大阪、神戸、姫路、岡山、福山、津山、広島、山口、尾道の12ヶ所で演奏会をやりましたが、大阪を除く他は至る所大成功でした。収入は全部焼けた東洋女子両市立音楽学校に寄附するつもりです」と。
 来る4日、日比谷公園新音楽堂催す本社の慰安音楽会に音楽復興会員の一人として出演する。ピアノの榊原直氏は先ずその半月の旅に於ける収穫から語りだした。
「一行は何れも脚絆掛のリュックサックを背負った勇ましい姿だったのです。之までの演奏旅行で常に悩まされたピアノも至る所立派なものが備えられてあったのには驚きました。案外に思ったのは大阪の中の島公会堂にあるピアノが一番劣っていたことです。此の次は盛岡、それから金沢へは4日。日比谷に出演する顔ぶれで重ねて出かけることになって居り、大阪でも更にやりたいと思っています。山田氏其他老人連も音楽復興協会というのを拵えて帝都
復興の歌を作っているそうですが、老人は理屈が多くていけません。……震災後の音楽会ですか、これまで流行していた変梃なものが一切影を没して真実味が加わってきたことは大変結構なことと思って居ます」と、その日を想わせるような若い元気を示した。


 そして大正12年11月5日(月)の東京朝日新聞には
「楽界一流の妙技に酔って
  感激に満ちた聴衆
    昨日日比谷に開かれた
     本社主催慰安演奏会」

この見出しで以下の記事があります。

「本社主催音楽復興●(判読不可)出演の慰安音楽大演奏会は4日午後1時半から日比谷公園新音楽堂に開かれた震災以来久しく音楽のメロディに接しなかった人々は、午前●自頃から既に入場し始め約1萬の聴衆は全く取締警部補の所謂「音楽堂始まって以来の静粛さを以て熱心に聴き入った、薄曇りの空、そよとの風もない秋空の下に是等の聴衆と演奏者との気分がぴったりと合ってこの計画は全く感謝を以て酬いられた、演奏者は提琴独奏の窪氏、ピアノの榊原氏、アルトの花島秀子夫人、ソプラノ竹岡鶴代女史等何れも一流揃いで特にベートーヴェンの三重曲作品1の1やトーマ作ミニヨンの竹岡女史、独唱に至っては●感激の絶頂に引込まれて聴衆は盛んにアンコールを続けて止まなかった。伴奏者として我楽界に第一人者たる榊原氏の妙技!聴衆は廃墟の都から芸術の国へ夢の如く誘い込まれて行った。震災以●脅かされ通した市民の心がこんなに慰められたか感謝拍手に抱擁された音楽家たちの顔も●●に燃えていた。

以上の記事からもこの当時クラッシク音楽では最も演奏回数の多かった榊原たち一行が東北のそれも岩手の盛岡に11月にやってくるというのは特別なことであり、実は、この背景には当時の盛岡市郊外の太田に大正4年(大正6年という説もある)に結成された弦楽四重奏団太田カルテット(主宰者梅村保)の存在があり、彼らを毎夏太田に或いは盛岡に招待し厚遇したことがある。
 実際には榊原直は窪と竹岡鶴代とともに来盛している。盛岡劇場の「罹災救恤大演奏会」に出演するためであった。ステージに立ったのは大正12年11月10日の夕べだった。午後2時からも予定が組まれていたが、三氏が極度に疲労していたので取りやめている。東京朝日新聞にはヴァイオリンは窪とのみ出ているが、太田カルテットのメンバー赤沢長五郎がのこしたプログラムによれば、窪兼雅であろう。盛岡公演のあと、太田カルテットは榊原ら一行を繋温泉に数泊招待している。
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大正の時代、関東大震災のときにも、このようにチャリティーに極限まで身を投じた音楽家達があった。私は音楽の側面からだけを書いているが、その他、それこそ地球を覆うばかりの善意が、大災害のときにこそ表れ出でている。去年の東日本大震災からあと一月弱で一年が経過する。いち早く支援に動いたアメリカのサマリタン・パースは今度3月2、3、4日と仙台で開かれる「東北・希望の祭典」に協賛しているが、このように世界中の善意が、また国中の心を揺さぶり突き動かし、慈愛の支援の想いを呼び起こし良心を呼び起こしてくれるのは、多くの犠牲になった人々のその事実、つまりは犠牲者の方々が人の本来の有り様に目覚めさせてくれるているのではないか、ふとそう思われたことである。

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