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復興途上の漁業に見えた海の現況「3・11 その時、それから わたしたちが伝えたかったことー31人の声ー」より

 昨日このブログに紹介した本「3・11 その時、それから わたしたちが伝えたかったことー31人の声ー」(ツーワンライフ刊)の寄稿者31人のうちのお一人の振り出しは、どうも水産庁の研究機関だったようで、以降水産畑を歩まれてきている。
 沿岸では水産の復興途上にあるわけだが、ニュースに水揚げなどが報道されても、甚だしいダメージに水産を直視できないでいたのだが、しかし、この方が以下のように書かれていた。

 「驚天動地の異変は海底地盤の滑り、隆起と陥没をもたらしたが、その規模は過去と比較すれば破格ではあるが、黒潮と親潮の流況から見れば影響は考えられない規模。従って、これらの海流が混合する三陸沖の特徴は今後も変わらない。言い換えれば、この三陸沖の混合域を舞台に生育する海産生物は、津波後の一時的減少はあっても変わらず活用できる。従って、北海道から千葉までの漁港に水揚げされてきた混合域起源の漁獲量約224万㌧(平成20年度総漁獲量の約41㌫を占める。このうち岩手・宮城・福島3県に水揚げされるのは、約65万㌧)は今後も到達できる水準であろう。もちろん沿岸域では堆積した瓦礫、浮泥の影響により、しばらくの間は生物生産への支障は考えられる。しかし、過去の津波後の体験から、津波後の沿岸域からは筏に垂下されたカキなどのほかこれに付着する生物まで含む多くのバイオマス(生物体量)が取り除かれるため、海域の上位捕食者は平年以上のプランクトンを享受出来る状況となり、海の生産力は衰えない。特にカキなどの養殖漁場ではこのことが昭和35年のチリ地震津波後に確認されている。すなわち、漁業の場である「海」は立派に残される。」

 甚大な被害も勿論証言されていたが、この箇所には、久方ぶりに漁業に明るみを見たように思った。ただ一方では、懸念される放射能として、

 「高濃度放射線物質が海に放出されてしまったために、長期にわたる影響調査が必要。現在までのところ、限られた海域範囲に止まっている放射能汚染であるが、生物作用を伴う長期の影響については世界の誰も確かめたことがない。人体や生態系への影響を確認し、危険性を排除する努力は、継続的に行うモニタリング抜きに進めることはできない。水産物は水揚げされてからの調査では間に合わないので、漁獲、収穫以前の調査を行わなければならない。早急にモニタリング体制を整え、調査結果を公表する以外に風評の防止はできないであろう。」

 と指摘、示唆している。

 この他、編著「3・11 その時、それから わたしたちが伝えたかったことー31人の声ー」には、議員、教員、図書館長、新聞店、会社員、商店主、主婦、寺、画家、小5、情報誌などさまざまな分野の方々の3・11気仙沼の目撃証言が記されています。山内繁・柳希嘉子編著。1500円。

 この益金はすべて震災孤児たちの支援に回されます。

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