黒田清輝展 & 口蹄疫
近所の方から菊の苗を20本頂いた。この時代、恐らくは菊用の鉢、土、肥料と売っているだろうと思い、園芸用品を扱っている店へと向かった。途上、岩手県立美術館で「黒田清輝展」が開かれているのが見えた。今日からだ。昼までには1時間半ある。左にハンドルを切る予定を覆しすこし直進して左に切る。
いまは一枚一枚を丁寧に見ることはしない。画廊をとにかく足早に歩いて目に留ったものに立ち止まってじっくりと見る。147作品のうち下記の作品に足を停めた。
裸婦習作(1888)、裸体・男(半身)(1889年)、祈祷(1889)、少女の顔(1890)、編物(1890)、繍物する女(1890頃)、編物する女(1890頃)、赤髪の少女(1892)、昔語り図画稿(舞妓半身像)(1896)、昔語り図画稿(舞妓半身像)(1896)、湖畔(1897)、智・感・情の3大作(1899)、花野図画稿(Ⅰ)(1907)、森の中(1910)、婦人肖像(1911ー2)、木村翁肖像(1919)
黒田清輝といえば「湖畔」のイメージで、写真でしか観たことがなく、実はそれほど良いとも思ってはいなかった。しかし今回の企画展で、寛いでいる女性像は僅かで、むしろ手仕事をする女性、困難、憂鬱を背負った女性の方にじっくりとした視線が注がれていた。
写生帳17点が展示されていたが、寸暇を惜しんで書き留める芸術家の姿勢には照らされた。何に於いて真面目といい、何に於いて不真面目というのか…
掲載は絵はがきのスキャン。少女趣味といわれそうだが、愛おしく感じられた一枚だ。「智・感・情」の大作を写真で観たときは作り物といった感じがしたが、実物は大違いだった。近くにあるソファに座り込んで観たのはこの大作だけである。特に「感」の上半身には惹きつけられる高い精神性があり、強烈なエネルギーに射られた。それはそれで凄い!のだが、やはり個人的に好きなのは、この後ろ姿「赤髪の少女」だった。正面から捉えた人物画よりも、背中から捉えたものに惹かれる。
当然写真撮影は許されないだろうと思ったが、訊くと企画展は禁止、しかし常設展のほうはフラッシュさえ焚かなければ可、と初めて知った。さっそく舟越保武氏の「聖ヴェロニカ」など女性像を撮らせてもらったが、「ゴルゴダ」は残念ながらきれいには映らなかった。
1時間で一通り観たつもりで美術館を出て、次なる買い物に。ほんとうに入り用なものだけを見て購入し12時ちょっと過ぎには帰宅。用足しのついでの美術鑑賞。きょう思ったことは、生活の合間の美術鑑賞で丁度良いということ。浸りきっていた頃がちょっぴり可笑しく懐かしく思い出された。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
こんどは口蹄疫のことですが、宮崎県で4月20日に口蹄疫が見つかってから3ヶ月。これまでにおよそ28万9千頭が殺処分となった。最期に宮崎県高鍋町の農場経営者が飼育する種牛6頭のワクチン接種と殺処分を拒否していたが、国に押し切られ、殺処分が開始となった。
3ヶ月の凄絶な戦い。消毒、殺処分、運搬、埋却。家畜の死体、死体、死体…の地獄絵だった。清浄化宣言がいつ出るものか、畜産農家の方々の保証がどうなるのか、保証だけでは到底償いきれない心の痛手を思うと、素直には喜べそうもない。
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