カラタチー随筆賞にだしそびれてー
岩手日報随筆賞にみなさんどんな作品を出すのかなと思いつつ、それに値する構想もなく、かつて書いたカラタチをワード原稿にまとめておいたのがあったので、ここに書き込んでおこうかなと言う気に。写真はカラタチではありませんが。
盛岡市志家町にあるIBCのぐるりにはカラタチの生垣があります。IBCの隣にスーパーが開店したこともあり、よくここを通ります。
春になると、瑞瑞しい若草色のひこばえがたくさん出ます。葉が出る前に、三、四センチの五弁の白い花が咲き、その後に葉っぱが出てきます。葉はかっちりとしっかりとつやつやとしています。二本の美しい曲線の合流点で棘が鋭く尖り光っています。秋にはピンポン球のような実がいっぱいついて黄色く熟します。私が特に美しいと思うのはカラタチの棘が、朝露を帯びてその滴が光り輝いている六月です。
十年ばかり前に、盛岡市立城南小学校の校庭には、見事なカラタチの木が三本ありました。我が家の庭にも植えたいとおもい、当時来ていた庭師さんに、相談したのです。
「カラタチを植えたいんですがどうでしょう」というと、庭師さんは即座に言いました。
「足さ、刺さる。靴を通すぉんさ。仕事擂るとき、まず、は、大変だ。植えで貰いたぐねな」というので諦めたのでした。この庭師さんは、他の家の高木を剪定していたときに、樹上から落下、首を骨折してしばしの入院ののち亡くなられました。お世話になった多くの方々が駆け付け、それは盛大なお葬儀でした。季節が来る度に思い出され胸が痛みます。
カラタチの生垣を通るたびに、カラタチの花が咲いたよ白い白い花が咲いたよ……カラタチのとげは痛いよ……」という歌が自然に口を衝いて出ます。北原白秋が作詞し、山田耕筰が作曲して大正十四年に雑誌『女性』に発表された童謡です。平成十九年には日本の歌百選にも選ばれています。
実は作曲者の山田耕筰が、昭和四年に盛岡に来ています。ユニセフの親善大使であった黒柳徹子さんの父であるヴァイオリニストの黒柳守綱さんを連れてきています。華々しい音楽経歴を持つ「からたちの花」の作曲者山田耕筰を盛岡の人々がどれほど楽しみに待ち望んでいたか。その一人である小田島孤舟、彼は歌人であり教育者でしたが、その喜びを短歌に託して岩手日報に寄せています。
まれなる令人来るときくからに
われきかまほしくなりにける哉
うれしもよ子らにまじりてわれもまた
『からたちの花』きくをおもへば
いづくよりきこゆるとなくほがらかに
きこえ来にけり『からたちの花』
子らはみないろめきたちて耕筰の
来るをまてりばらの咲く日(か)に
『からたちの花』をきかむと子らはみな
いろめきたてりばらの咲く日に
耕筰をひとたびきかばあめつちの
はてなむ日にもわすれじとおもふ
むら肝の心の底ひにしみとほり
消ゆべくもなし耕筰のこゑ
すゑらし看板の文字くろぐろと
花咲き匂ふアカシヤのかげ
どれほどに孤舟が、そして人々が、「からたちの花」をあいし耕筰を待ち望んだかがうかがわれます。わたしがからたちを美しいと注意深く見るのも、すでに無意識のうちに「からたちの花」の旋律が心にあるからでしょう。
「からたちの花が咲いたよ白い白い花が咲いたよ。/からたちのとげはいたいよ青い青い針のとげだよ。/からたちは畑の垣根よまろいまろい金のたまだよ。/からたちのそばで泣いたよみんなみんなやさしかったよ。/からたちの花が咲いたよ白い白い花が咲いたよ。」
カラタチは、万葉集では「枳の棘原(うばら)刈りそけ倉建てむくそ遠くまれ櫛造る刀自
(とじ)」と詠まれ、嫌われもの。「枕草子」でも「名恐ろしき」と書かれています。カラタチは、昔は安全のために生垣として植えられていたのですが管理が大変で、ブロック塀な
どに変わっていった昭和三十五年ごろからは急速に減少したようです。嫌われもののイメージが変わったのは、やはり「からたちの花」の歌によるといいます。
我が家の近くの盛岡市立城南小学校の校庭にあった三本のカラタチ、それは立派な美しいカラタチでしたが、最近伐られてしまいました。傍を通るたびに必ず見ていた木が、ある日忽然と姿を消したのです。ほんとうに残念でなりませんでした。棘が子どもたちに危険だということでしょう。
カラタチを思い出すとき決まって「からたちの花」の旋律が浮かびます。
「からたちの花が咲いたよ白い白い花が咲いたよ
からたちのそばで泣いたよみんなみんなやさしかったよ」
わたしは、棘が怖いとか痛そうと感じたことはありません。むしろ、面白い屈折を見せる茎から出るカラタチの棘ほど鋭い美しさはないと見るたびに感心してしまうのです。
2010/04/17
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