乳価の矛盾
毎日おいしく飲んでいる牛乳。価格もメーカーによってさまざまですが、無調整で何と1㍑145円のときがありました。今日行ったスーパーでは178円、230円。さらには1000円程度のものなど、も~う、どうしてこんなに違うの? と思うほど。成分も様々です。
「基本的に草を食べさせて得られる牛乳の乳脂肪率は3.0~3.5㌫。夏は牧場に放牧し、水分の多い青草を食べるので3.0程度。冬は牛舎につなぎ、乾草やサイレージ(牧草を乳酸発酵させて作った飼料)を与えるので3.5程度。こういった自然な牛の飼育では、乳脂肪率がこの水準を上回ることはまずない。
ところが酪農の現場では3.5~3.8という高脂肪路線となっている。何故か。それは、1987(昭和62)年に、メーカーと農協によって、3.5を下回る生乳が出荷された場合、出荷価格(単価)を半値とするルールが導入されたのだ。」(「黒い牛乳」中洞正著から)
牧場飼育で乳脂肪率が一定した牛乳は得にくい。乳脂肪率に拘り、買い上げないとなると、これは理想的な山地酪農の切り捨てであるともいえる。常時高脂肪率の生乳を得るには、牛を一年中牛舎につなぎ、輸入穀物主体の飼料を与えるとよい。そこで酪農家は、放牧をやめて、このスタイルに転換したという。山地酪農を推し進めてきた中洞正さんは、現在ホルス(乳牛)を飼っていない。詳しい事情は訊いていないが、理由はこんなところにあったのだろうか。
飼料の輸入先は主に米、オーストラリア。トウモロコシのおよそ92、7㌫はアメリカからの輸入で、このほとんどが飼料用である。2008(平成20)年に乳価が上がったが、これはトウモロコシなどの輸入穀物が、バイオ燃料の原料に回されたり工業化が進む中国で需要が増したためであるという。
オーストラリアは地球温暖化の大きな打撃を受け、降雨量が2年連続で過去10年間の平均を下回る大干ばつだった。小麦栽培に大きな被害が出た。特に南部のニュー・サウス・ウェールズでは史上最悪の旱魃による大被害だった。
一方アメリカでは、小麦、大豆、トウモロコシの穀物価格が一年間に2倍に上がった。アメリカでは穀物をエネルギー原料として出荷するのと食糧としての出荷と2通りある。いまのアメリカの農家の関心事はWTOの交渉経過ではなく、原油価格の動向であるという。
現在の穀物価格急騰を作っているバイオ燃料需要も、このまま続くとは予測しないとフィッシュラー氏は見解を出してはいるのだが。
「なぜ自給率が低いと言いながら米が余っているの?」とスウェーデン記者が訊いたという。不思議だろう。フランスのワインとおなじコメにたいする文化意識という事情があるようだ。しかし、もはやこの意識にも変革が迫っている。「日本の米問題は休耕地活用も含めた休耕地活用も含めた水田生産力の新たな可能性をさぐる必要がある。当然日本農業のアキレス腱である家畜生産と結びつく飼料米喫緊(きっきん)の課題となる。トウモロコシの代替飼料穀物として生まれ変れれば一大穀物として甦るであろう。」(「海外ジャーナリストが見た日本の農業・農村」から)
何れ地球規模の温暖化、旱魃などで、輸入穀物が入って来ない事態は常に予測される。アメリカの穀物生産量はほぼ一定しているという。緊急には、これの奪い合いとなるのか。或いは他から買い付ける道を模索することになるのか。
何れ減反などしている場合だろうか。休耕地を放っておくべきだろうか。もしこのまま通年牛舎型酪農をつづけるとしたら、コメも家畜に与えざるをえないのではないか。しかしそれも家畜より人に回さなければならない事態も起こりうる。農協がメーカーと組んで、山地酪農の牛乳価格を切っているばあいではない。乳脂肪率に関わらず生乳を、農政の補助をもってしても同じ価格で、否むしろ高値で買い上げ、穀物ではなく草を食べさせて生乳を得る山地酪農を保護するべきと思う。山地酪農では乳量が多く得られないという課題はあるかもしれないが、保護することによって、或いは、こういった酪農に取り組もうという意欲を引きだし、従事者を若干でも増やせるのではないか。乳脂肪率が低ければ低いなりに技術を用いて消費する手だてを講じることができるのではないか。
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