映画 「コルチャック先生」
'10.1にポーランドで、アウシュビッツ解放65年記念式典があった。ユダヤ人ら約150万人がガス室などで殺害されている。これを機にナチス・ドイツ映画を観てみようと思い、図書館でさがすうちに、孤児院を経営し最後までユダヤ人孤児200人をナチから守ろうとした「コルチャック先生」(1990)が目に留った。実在の人物でユダヤ人の小児科医だ。監督アンジェイ・ワイダ。出演ヴォイツェフ・プショニャック、エヴァ・ダウコフスカ。
ナチの映画で戦慄するのは、人を撃つとき打擲するとき、動作にすこしの躊躇いもないことだ。
子ども達と遊ぶコルチャック先生
洗濯婦がユダヤ人の服は洗濯したくないというのだが、コルチャック先生は自らすすんで洗濯をする。夜中に書き物をしているとき、子ども達が用足しで目を覚ますと駆け付ける。ユダヤ人として生きる誇りを失った青年や子ども達を、いたわりと優しさ、そして知恵ある言葉で誇りを持たせ勇気づける。ゲットーに追い込まれ、食糧が行き渡らなくなったときにも、子ども達に食べさせるために、果敢に立ち向かっていく。自らを捨て闇で肥えた人々からの援助も受ける。希望を捨てずに、幾多の困難を乗り越え子ども達の命と尊厳を守ろうとするが、しかしついにトレブリンカ収容所への移送命令が下る。
コルチャック先生を惜しみ救おうと、病気の診断書を書く者あり、アメリカ行きのビザを取り逃れるよう勧める者も。しかしすこしの迷い、躊躇いもなく退ける。
孤児院にナチがやってきたとき、遠足だといい、子ども達に一番立派な服を着るようにいう。連行されるときには、子ども達を庇い守りながら進む。家畜車に渡された板を、すべての子ども達が渡り終えたとき、自らも子ども達と運命を共にするべく、その板を渡りきる。扉は閉じられ、施錠され、列車はトレブリンカへと発った。
コルチャック先生のラジオ放送がいまも耳に残る。
「世の為、人の為に身を献げるというのは嘘です。ある者はカードを、ある者は女を、ある者は競馬を好む。わたしは子どもが好きです。これは献身とは違う。子どもの為にではなく、自分の為なのです。自分に必要だからです。自己犠牲の言明を信じてはいけない。それは虚偽であり、人を欺くものです。」
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