北上山地 ーイヌワシー
いわての〝宝〟イヌワシは、いったい何を食べて生きているのか。
ノウサギやヘビを中心に、ハト大以上の鳥類、テン大以上のほ乳類をハンティングする。メインはノウサギで、地域や季節によりヘビとなったりヤマドリとなる。
空中ハンティングで狩られる餌鳥類は当然のことながら幼鳥や亜成鳥が多い。回避(イヌワシが飛ぶ高度よりも高い位置に回避して直撃されるのを避ける)するということを知らないものがやられる。
森林でのハンティングは、中小型ほ乳類や、5,6月ごろに鳥の卵を狙い樹冠にいるヘビなど。
冬場に死亡したシカやカモシカ、イノシシも食べるようだ。
イヌワシの大好物であるノウサギは身を隠すようなブッシュ的なところが連続してあると多く棲息する。ヤマドリは餌となる植物、即ち草本ではイネ科の植物が豊富であること、木本ではマメ科の植物が豊富であることと推察されているようだ。
大部分のイヌワシはノウサギを主食としているが、ノウサギを増やすにはノウサギが好む植物が多くなくてはならない。ヘビやヤマドリについても同様なことがいえる。
(以上はブログ「猛禽の部屋」からの抜粋です)
ところが、大規模な北上山系開発により、道路などは改善されたが、当時造成された多くの公共草地の経営は厳しくなる一方。北上山地に合った「夏山冬里」(夏期は昼夜放牧、冬は里の畜舎)方式で飼われていた日本短角牛の飼養頭数も激減している。
もともとはイヌワシが北上山地で生き延びてきたのは、ウサギなどを捕獲しやすい草原の存在が大きかった。この草原は昔南部馬で栄えた北上山地の人間活動によって維持されてきた。ところが畜産振興とともに拡大された草地に裸地化が進んでおり、これがイヌワシの生存を脅かしている。
傾斜の点からみると,確かに,北上山地には山稜部を中心に開発可能地が多いが、標高が高いために、寒冷地特有の荒廃裸地化の問題を常に抱えている。即ち、山稜部のシバ草地では地面が直接寒冷寡雪気候にさらされるため、土壌の凍結、融解が頻繁に生じる。これが牛馬の放牧圧(採食・踏圧・糞尿)や病原菌によるシバの枯死でむき出しになった地面に作用し、裸地を拡大していく。これに降雨による雨洗いや風蝕が加わり、裸地化はさらに加速される。昭和51年に、北上山地の荒廃裸地は標高900メートル以上の頂陵部西~南側斜面(冬季の風衝斜面)を中心に、893ヶ所、合計面積352ヘクタールに及ぶ。
この値は、これまで人為のもとで維持されてきたシバ草地における200~300年間の累計である。この裸地化スピードが人口草地化したことで、鈍るのか或いは加速されるのか。この評価は早急には下し難いが、適切な草地管理により初生的な裸地の発生が抑制できれば、寒冷気候下の裸地化スピードは確実に鈍るであろう。この意味で、北上山地山稜部の小起伏地はきめ細かな草地管理のもとではじめて、土地資源的価値を持続しうるだろう。
(以上は「荒廃裸地化の潜む北上山地山陵部の草地」からの抜粋です)
上記の数字は昭和51(1976)年現在。いまはどうなっているのか。検索してみたが、うまく数字に行き当たらない。実態を知るのが怖いくらいだ。
いわてのイヌワシがいまどうなっているのか。
岩手ではおよそ30つがいの営巣が確認されており全国最多。そのほとんどが北上山地に棲息しているという。そのうちでも岩泉町は8つがい確認されておりイヌワシがもっとも多く住んでいる市町村となっている。
家畜の糞尿処理に関しては糞尿処理法を設け、さまざまな研究がなされているようだ。北上山地が裸地化から救われ、イヌワシも、動植物も本来あるべき姿で存在できるように、全くの回復は無理としても、被害を最小限に食い止める本格的な対策が為されているのか、どの程度着手されているのか気になるところだ。
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