北上山地ー酪農入植者の償還金ー
北上山地に入植(北上山系開発の酪農プロジェクトに)したある方は、当初1億だった借金が、「まだ3千万」あるという。7、8千万払ってまだ3千万残っているのだ。それでも入植者の中では返還してきた方だろう。高額所得者には到底知り得ない苛酷な労働投下での返済だ。他の方々も返済不可能、或いは1億払って尚数億あるといった状況であろう。
この償還金の問題には、しばしば牛肉の輸入の自由化、関税引き下げの波による乳価、雄子牛価格の暴落、飼料の高騰などが挙げられる。しかし本当の問題の根は、入植の時点にあった。
ある方は、53年の入植当初、負担金は約4千万といわれていた。ところが、58年の牧場の引き渡しのときには、2度にわたるオイルショックを経、資材が高騰し、約1億円に跳ね上がっていた。ここで役場と入植者との間には激しいやり取りがあったのだが、請求されたキャンセル料の支払いができなかった為に、入植せざるを得なかった。このキャンセル料についての事前の説明は無かったと聞いている。出来上がった施設にもはや失敗と分っていながら、行政は、強引に入植者たちを押し込んでしまったとしか私には見えない。言うも恐ろしい気がするが、やはり言ってしまった。
渡辺基氏の「北上山系開発入植者の経営」によれば、この償還金は「5年据え置き15年償還、利子率7、5㌫の国の財政資金の融資で賄われた」とある。サラ金と変らぬ借金地獄だ。後には低利子の農協資金に借り換える、或いは利子の猶予など対策が執られたが、現状はさして変ってはいない。
100年に一度の同時不況で上場企業ですら倒産する時代。農政にいかほどの手当が期待できるのか。企業を持たせなければ日本が潰れると言われるのだろうが、この北上山地でこの厳しい状況下にも如何にしてか借金を返さねばならないと日夜苦慮、苦闘している私の友人が居る。気丈で底抜けに明るい。このことはあのイヌワシも
知らないはずはないのだ。
手掛けたときにはさして疑問も抱かなかったが、いま思うに、関わったゼネコンとはどこどこ? 農用地開発公団とは何ぞや? 国土開発とは? …分らないことだらけだ。
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コメント
内丸育ちさま
お久しぶりです。お元気でいらっしゃいましたでしょうか。
山林を維持するのはなかなかに厳しいようです。ほんとうに最終処分場とならないよう願っています。
わがイヌワシ(勝手に自分に引き寄せていますが)も内丸育ちさまに美林を維持して頂きたいと願っているはず。
北上山地の草木、生き物たちが活き活きとするさまを見たく思います。
訪問有難うございます。
山々のもようなど自然体でお伝えしてゆきたく思っておりますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。
投稿: 中ぶんな | 2010年2月20日 (土) 12時23分
それを考えるだけでも生きた心地がしません
私自身北上山地の山林所有者です
子孫に美田を残さずなんてとんでもない
美林を守り育て子孫に引き継がねばと決意しても現実は恐ろしいです
最終処分場の恐怖です
一つでも間違えば山は最終処分場になってしまいます
投稿: 内丸育ち | 2010年2月19日 (金) 23時53分