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真っ白な木-プチ童話その2ー

 真っ白な木、雪がつもって真っ白だとばかり思っていた木からとびだしてきた動物たち。りす、きつね、うさぎ、くま、ふくろうたち、それから5匹のそれぞれのなかまたち12匹。

 りすがもっていたのはドングリの形の小っちゃなルビーでした。くまがもっていたのは、透明な黄色い栗の実。どうやらトパーズです。

 みんながデモちゃんを取りかこみます。デモちゃんのまわりの雪は、デモちゃんの好きな動物たちの大きな足跡小さな足跡がいっぱい。

 デモちゃんは言いました。
「こんなにきれいなドングリ、いったいどこで見つけたの?」
りすがしっぽをぱたんぱたんさせながら言いました。
「流れ星がたくさん落ちた夜、雑木林にも何か落ちたの。そのあたりの木にもぐりこんだら、たくさんのドングリの中で、一つだけ光る実が枝についてたんだ。それがこれなのさ」

「流れ星が落ちると、いつでも木に石の実がなるの?」
するとふくろうが目をしばたたきながら言いました。
「きつねさんの友だちが病気になって、飲む薬もなくて、お医者さんも来なくて、たった一人で死んでいったとき、トチの木には、青く透明な石の実が付いてたって聞いたよ」
「きっとロイヤルムーンだ。涙のような宝石だからね。どうも悲しいことがあると、どれかの木に光る石の実がなるみたいだね」とデモちゃん。

 こんどは、きつねが、そうかもしれないと小声でつぶやきました。
「りすくんの従兄がね、冬に備えて木の実を一生懸命に集めたところが、誰かにぜんぶ横取りされてしまったことがある。そのときにも、流れ星がたくさんふったってさ。栗のいがに入ってた三つの栗のうち、一つだけが透明な黄色の実だったそうだよ」
 くまが驚いて、もっていたトパーズの実に小さくまん丸な目を一回り大きくしました。
きつねが怪しそうに言いました。
「くまくん、もしや、それって、りすくんの従兄のものだったんじゃないの?」
「違うよちがうよ、ほんとうに僕が見つけたんだ」

 ふくろうが仲裁していうには
「どうやら石の実は、悲しい人には届かないらしい。誰かが、その人の代わりに受け取って、幸せをもらっているのかもしれない」
 みんな真っ白な雪のうえに立ちすくんでうなだれました。
「僕、これ返すよ」とりす。
「僕も」。くまも、すまなさそうです。
みんな空を見上げました。
「わたしたち、また、木になりましょうよ」とうさぎ。
 みんながピラミッドを作ると、またもとのように雪をかぶった木のようになりました。りすが、てっぺんですました顔でルビーのどんぐりとトパーズの栗を捧げ持っています。

 もう暗くなってきたので、デモちゃんは動物たちの木に振り返りふりかえり「さよなら」を言いました。

 とおりかかった動物たちが、どこか不自然な白い木をどこが変なのかに気づかずに見上げては遠ざかっていきます。

 夜空には威厳のある雲がかかっていました。けれどもゆっくりと流れているようです。ほんのすこし、そしてまたすこし流れていきます。星空のドームが、しだいに広く大きく深くなってきました。そして冬のダイヤモンドがすっきりと現れたとき、12匹は、はっとしました。これまで見たこともない星座、南十字座が、星の六角形の中にすっきりと掛かっていたのです。ここからは決して見えるはずがないのです。
 驚きに輝く24の瞳が、いっせいに星の十字架を仰いだとき、リスの手からは二つの石が消えていました。

 デモちゃんは家で毛布にくるまり、カーテンをちょっとだけ開けて、さっきから夜空を眺めていました。そして、たったいま、、星が、悲しむひとたちに届けるために、たしかに石を受け取ったことを直感したのでした。

                     2009年11月28日 ぶんな

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