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こう書けば落ちるー岩手日報随筆賞、落選原稿を検証するー

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岩手日報随筆賞の発表が今日の朝刊にありました。
最優秀賞 小野まり子さんwinetulipclover題が何と「牛飼い、再び」
       単に家畜としての扱いではなく、牛への愛情がじんわりと伝わってきました。さまざまな意味でうれしい作品でした。
 優秀賞 神田由美子さんwine
 優秀賞 佐藤明美さんwine
 優秀賞 吉田真人さんwine

さて、「じゃ、あなたは投稿したの?」には「はい」。しかし、しかし落選してしまいました。トホホ。けれども選ばれた方々の内容を読んで、納得!!そこで、自分のをどう扱うかといえば、〝模範的落選作品〟として取りあげ、「こういうふうに書くと落ちます」(他の入選しなかった方々の作品については、受賞するか否かでは決められないこともありますが)と後々の方々のために、また自分のためにも、足りなかった点を検証することに。というわけで、以下はわたしの投稿作品です。検証は明日になります。

   琴

 実家の床の間に一台の琴が立てかけられている。私が20歳のころ稽古用に使っていたものだ。結婚した後にも置き所がなく預けたままだった。
 母は孫たちがきたとき琴をケースから出して遊ばせていた。まだ幼児だった姪二人と私の二人の息子たちが実家で合流したときにも、久しぶりに琴を取り出した。私は長い弦を持ち上げて駒を立て、音を合わせた。中指、人差し指、親指に爪を差しこむ。かつて汗だくになって取り組んだ『六段の調べ』の最初の三つの音を鳴らす。長い間放っておいたのだが、高音は明るく澄み、低音も荘重に鳴ってくれた。弦の音質を確かめるためにはこの三つの音を繰り返すだけで十分だった。
 母が孫娘に、古い和服から仕立て直した赤い花柄の着物を着せた。小さな指に琴の爪を押し込んだが、指が細すぎて爪がぐるぐると回る。母ははしゃぐ4人の孫を窘めながら琴の前に正座させた。琴を習ったこともない指がかき鳴らす弦は、ガシャガシャと賑やかに鳴り響いた。弟嫁がカメラを構える。シャッターがカシャとおりた。
 そのときの一枚を身近に飾りたまに眺めている。床の間を背中にして着物を着た女の子が弦を爪弾き、白と黄色のセーターに吊りバンドをした息子たちが、右隣でそんな従妹を見ている。満面に無邪気な笑みだ。
 数年後、私は、この琴を買うときに選んでくれたのは、『忍ぶ川』で芥川賞を受賞した作家三浦哲郎の姉貴美恵さんであることを母から聞いた。もっとも購入したのは母ではない。母は幼いとき父親を亡くし、親子で一戸町にあるふと店を営む叔父の家に身を寄せていた。この家の二階を、箏曲師範である貴美恵さんが、駅からも近いということで稽古場として借りていたのである。貴美恵さんから琴を習い買うときに琴を選んでもらったのは、母の従妹であるこの家の二女F子だった。当時早稲田大学を休学中だった三浦哲郎が、一戸町の広全寺住職春覚さんと連れだってよく稽古場に来ていたという。春覚さんは三浦家が墓を八戸市から一戸町の広全寺に移転させるときに手伝ったのが縁で三浦家との付き合いがある。春覚さんは尺八を奏したようだ。   ーつづくー



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