ストラディバリウス「マダム・レカミエ」はいまどこに?
ストラディバリウス「マダム・レカミエ」は、アントニオ・ストラディバリ(1644から1737)が約1200挺制作(約600挺が確認されている)したヴァイオリンのうちの1727年製(1717である可能性も)のもの。ナポレオンがレカミエ夫人にプレゼントしたところからこの愛称が。そこからの経緯は分からないが、これをミッシャ・エルマン(1891~1967)が婚約者からプレゼントされている。
このエルマンが1921(大正10)年に来日。2月16~30日帝国劇場で演奏している。エルマンは情熱的な演奏スタイルと美音で有名だが、当時の演奏家、楽器製作者は多大な影響を受けている。わたしが調べている太田カルテットも然りであった。この来日のときエルマンが一体どの楽器を持参したか、ストラッドを何挺か持っていた彼が、どれを持参したかは、わたしには大変な興味だった。というのは、太田カルテットのメンバーたちが、この演奏会のあとには音楽意識が変化している。いよいよ弦楽研究に熱が入り、数々の音楽会企画も行うようになっている。これはエルマンの演奏技術、音楽性のみならず楽器も優れていたはずと考えた。このほどツィメルマンがピアノ持参で来日。ツィメルマンに限らず、演奏家の楽器へのこだわりは分かる。大正10年の帝劇に鳴り響いたのが何年製のストラッドかを特定するのは半ばあきらめてもいるが、せめてレカミエのありかを知りたかった。
それがこのほど、このヴァイオリンを持っているのは上野製薬(株)であるとわかり驚いている。既に斯界には知られているだろう。そして貸与先は、山田晃子さん。ヴァイオリニスト山田晃子さんとは?
父の転勤で2歳のときロンドン。3歳でススキ・メソードの指導者である母玲子につきヴァイオリンを始める。7歳でパリに。パリ市立音楽院に。2000年第1回アヴィニヨン国際ヴァイオリンコンクール第一位。2001年第14回ドゥエ国際ヴァイオリン・コンクール第一位。2002年1月モーツァルト国際コンクールヴァイオリン部門第二位。2002年11月ロン=ティボー国際コンクールでは史上最年少16歳で第一位。2003年シャンゼリゼ劇場でクルト・マズア&フランス国立管弦楽団と演奏。(Wikipedia)
等々・・・まだまだありますがWikiで知ることができます。とにかく華々しい。レカミエは現在このような山田晃子さんのもとで毎日妙音を響かせているらしい。
さて所有の上野製薬(株)とは?
創業1918(大正7)年。といえば少々こじつけがましいのですが、ちょうど太田カルテットがカルテットたらんと悪戦苦闘していた時期です。当時の誰もが、この会社が後に億単位の楽器を獲得し世界に文化貢献を果たすだろうとは夢にも思っていなかったでしょう。資本金10億1千万円。本社大阪。従業員数国内409人、ウエノタイ360人。年商335.2億円。事業内容は会社HPでどうぞ。
次には、こういった名器を所有できる企業とは、音楽財団とは、団体とは、個人とは?そしてどこがどれを?とこうなるのですが・・・
興味のあるところでは、かつてヤッシャ・ハイフェッツが所有していた三大ストラディバリウスの一つである1714年製のドルフィンは、現在諏訪内晶子さんが日本音楽財団より貸与されている。
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