この近所のいつもの方から岩山漆芸美術館の招待券「世界へ発信する 漆の神秘 企画展」を頂いた。そこで行く予定がなかったがせっかくなので行ってみました。28日最終日の閉館1時間前に滑り込みセーフでした。早く書きたかったのですが、太田カルテット関連が先だと思われ遅れました。
おおっ!と観たのは螺鈿をふんだんに使った家具。皇居か大企業の社長宅か、あるいはオイルマネーにさらわれてゆくか、はたまたどこぞの美術館に安置されるのかと思うほどの豪華絢爛。どうか美術館永住となるようにと願いつつ細かな螺鈿細工に感嘆したことでした。それはさておき。
音を聴かずして書く非常識再び。漆塗りのエレキ 「フェルナンデス」が完成していました。これは従来の塗装法として聞かなかった方法なので、興味深く観?ました。楽器は弾くものですが螺鈿が緻密に施され、美術品としても雅な美しさがありました。
ここからは、「愚行連鎖」を参考にして書きますが。
楽器は塗料と塗装法が音質の70㌫を決めるといわれています。
ヴァイオリンでいうと表板、裏板、側面板のそれぞれの木質の細胞繊維に合わせた天然塗料の種類と配分比率をもって調合したニスを塗装します。これで古名器の音を再現したアンドレア・ヴァイオリンがあるようです。
ストラディバリ、ガルネリの今日の楽器との違いは、一説には、やはり独特な天然塗料にあるとされています。どのような調合かは分かりません。
ただ原始的でより木に近い性質を持った塗料を薄く塗るほど木本来の振動特性を失わず良い音が得られるようです。
ギターでは、廉価版から中級品の楽器塗装にはポリウレタン、ラッカー、カシー塗装です。作業効率がよく耐用年数が長く多くのメーカーが採用しています。塗装法は吹きつけです。古くから使われているのはセラック塗装。これは原始的でより木に近いといえるかもしれません。セラックとはラックカイガラムシ(臙脂虫。半翅目カイガラムシ科)が豆科、桑科の樹木に寄生して樹液を吸って体外に分泌した樹脂状物質を精製した天然のポリエステル樹脂で成分は樹脂酸エステルです。
以上がだいたい一般的な楽器塗装です。
今回見た、「聴いた」ではないので書きにくいのですが、漆塗りはそういった点で意外でした。しかし原始的でより木に近いという点では、ラックカイガラムシの分泌物にお世話になるよりもより木に近いどころか、漆の木の分泌液という点で、まさしく木の成分による塗装なのです。取材はしておりませんが、全先生の着眼もここにあったと推察します。
しかも漆は電磁波を吸収するといいます。表現が適切かどうかは分かりませんが、エレキには「がなり」「高音の膨らみすぎ」「高音により音の散逸」「マシン的音の過度な増幅」があると思います。そういった部分が吸収されるなら、エレキの生命部分、特質的音が具現されるものと期待されます。いまは漆の99㌫が輸入。国内の1㌫は浄法寺の漆なそうです。このエレキもたぶん浄法寺の漆でしょう。
エレキ Fer nandes の説明はこうでした。「フォルテピアノが弦の振動に増幅されてクリアな音が出る。微妙な音から強い音まで表現でき強弱がはっきり出る。漆で高音に透明感が出る。低音からさらに磨きのかかったきれいな音が出る。13年間漆の電磁波について研究。漆には強力な電磁波を吸収する能力があるためエレキの強い電磁波を吸収する」
今回完成したのはベースギターです。クレモナと並び、世界の名器は岩手に!! 名器の塗料は浄法寺に!! となればよいのですが。
楽器はここまでで、こんどは時計。セイコーとの提携で「クレドールジュリ典雅」が完成。難関は、漆と金属をいかにして融合させるかだったようです。これも二年間の研究によって克服。ただ5250万円という値段。いったい誰の腕に。有り余る財力を誇示したい方にはどんどん買って欲しい。300万円代の時計も製作したようです。岩手が潤うのを期待します! セレモニーには達増岩手県知事の顔も見えていました。
家具、エレキ、時計ともに館長の全龍福(チョン・ヨン・バク)先生の製作です。
もう一つ、韓国では漆を薬膳として供するらしい。それだけではなく、牛に飼料として与えている。漆育ちの牛は旨みがあり倍値段で取引されるという。酪農家に朗報となるだろうか。
漆は殺菌力もあり中尊寺の首桶の蓮の種が腐らなかったのはそのためといいます。種は800年後に開花。奇跡の花がいまはそちこちに分けられるまでに!
漆の可能性はまだまだありそうです。
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