エミリー・ウングワレー展ー国立新美術館にて7月28日までー
上京三日目(9日)は姉も共に国立新美術館へ。国立新美術館は亡き黒川徽章氏の設計です。ダイナミックに円盤を持ち上げその上に喫茶やレストランを載せている。外観は曲線を生かしたガラス張り、などと下手な説明をするよりもちょっと検索すれば風変わりな建造物がすぐに出てくるのですが。コレクションを持たない1400㎡の展示スペースを持った美術館です。
奇しくもモディリアーニの最終日でした。入場者は5月29日時点で20万人を突破したようです。時間節約と見所を素早く掴むため音声ガイドを耳に巡りました。当たり前のこととはいえ印刷物とは大違い。それは素晴らしいものでした。彼のパトロンが当時、ピカソの絵の二倍はする、といったそうです。ほんとうにそうかどうかは別として、芸術は値段ではないとはいえ、その評価には納得するものを感じました。1919年のジャンヌなどの人気が高いようですが、わたしは1918年のバラノフスキーがいいと思いました。
モディリアーニ展、いまは大阪です。
今ひとつの展覧会エミリー・ウングワレー展は、絵画を理解するに時間がかかりました。一見包装紙や和服地のようでもありましたから。
エミリーが描いているときの姿、映像には打たれるものがありました。オーストラリアの先住民族アボリジニとして生まれ、固有の文化の中に生きながら、作品が確固たる評価を受け数億を売り上げる存在になってからも、アトリエも持たず、変わらずに赤土の上に座って赤土の上にアクリルカンヴァスを広げひたすらにに描き続けている異色の作家でした。ろうけつ染めのバティック、点描画など。色彩の豊かさには驚かされます。あの色彩を彼女はいったい何処で見たのか。彼女の住む周りアルハルクラには赤土とその上にやっと生え出たかの低木、そしてボディペインティングの縦縞、エミュー、ヤムイモの色彩の他にないように見えます。
ドリーミング。解説によれば「アボリジニの宇宙観や創世、祖先、宗教的及び社会的な行為に関する掟、彼らの生活を支える霊的な力、それらに関連する物語を包括的にさす」。理解するにも何やら現実味に遠いのですが、エミリーの体内にあるこのようなモードから、100点余の膨大な作品群のなかに、あの摩訶不思議な色彩がとくとくと流れ込んでいるような気がします。圧倒されつつ見て回るうちに、しまいには、この色彩は、エミリーをアボリジニの代表者として、すべてのアボリジニの人々、アボリジニの民族の熱き祈り、熱き望みが溢れ輝き出たものであるとも思われてきたのでした。
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